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環境問題の課題と解決法「インデックス」 ・・・ トップページへ戻る

テーマ「捨てる人と拾う人」 上益城・宇城エリア


 緑川の最奥部に位置する緑仙峡は自然の宝庫。ここに住まう人たちは、時には自然の厳しさにさらされながらも自然に学び、自然と共生するすべを身に付けてきた。しかし、“山の暮らし”は揺らいでいる。風光明美な景色が広がる背後には、風水害や高齢化問題など、のっぴきならない現実が横たわっているのだ。自然を愛し、伝統を大切にする住民の生活は十年一日と変わらない。ただこの先、緑仙峡の自然資産を地元だけで担うには荷が重すぎる。

緑川源流、緑仙峡に生きる
自然資産の維持・継承
“よそ者”の応援に期待
 県央を流れる緑川。奥へひたすら分け入った源流地帯に、緑仙峡の自然美が広がる。峡谷の景観は四季を通じて楽しめるが、一番の見どころは山々を彩る秋の紅葉だ。訪れた人は有名観光地とは一味違う飾り気のない自然を満喫できる。そしてこの地に暮らす人たちも、いにしえの時代から自然と折り合いを付けながら暮らしてきた。
 ただし、自然資産の維持、継承の面では課題が山積する。
 まず、近年の台風や大雨が山川を打撃。文化財や住民の安全をも脅かすようになった。特に、「穿(うげ)の洞窟」が四年前に土砂で埋まったのは痛手だ。民話が豊富な当地のシンボルで、今も親しく敬われているが、かつて自由に行き来できた空洞の奥はふさがれたままだ。
 もう一つは高齢化に伴う若年層のマンパワー不足。せっかくの観光資源を十分に生かせずにいるばかりか、災害の復旧にも人手を欠く状況だという。
 緑仙峡は廃校を宿泊施設として再生するなど“村おこし”の先駆者だったが、現在は自力で次の一手を打てずにいる。人手とアイデアの両面で他地域の協力は欲しいが、奥ゆかしい住民ゆえにあからさまな要請もできない。それが実情だ。
 もっとも応援団がいないわけではない。穿の洞窟の土砂の除去作業には「緑川の清流を取り戻す流域連絡会」の有志が二年連続で駆け付けた。会長の濱崎勝さん(六三)は河口の「天明水の会」の立ち上げ人で、緑仙峡の人たちとは植樹が取り持つ十数年来の知己だ。「当地の皆さんは守りに懸命ですが、時には別の角度から“壊す”視点も必要。それができるのは外部の人間です。街づくりにはよそ者と若者、さらに人目を気にせず突っ走る者が不可欠。流域にはいろんな人がいます。今後も支援は続けますよ」と濱崎さん。また「地域が元気になるには、一万円札を持って大勢で遊びに行くのが一番。とにかく皆で応援しましょう」とも。
 緑仙峡の行く末は、忘れ去られた秘境か、それともケアの行き届いた珠玉の穴場スポットか―。それは私たち県民のかかわり方次第ともいえるだろう。
 紅葉は今年も圧巻の一言。そして、絶景の下では今も声なきSOSが発信されている。

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「穿の洞窟」は土地に伝わる民話のシンボル。
かつて行き来できた空洞内は土砂で埋め尽くされた(上)






紅葉、民話―今も健在
もっと他地域と交流を


木原谷緑川自治振興区会長 奈須 昇さん(74)

「観光ガイド・インストラクター」を務める奈須さんの願いは、若い後継者の輩出だ
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 縁仙峡の“顔”とも言うべき奈須昇さん(七四)はすこぶる壮健な人だ。七十のよわいを重ねた今もなお現役で山岳ガイドを務め、温厚な人柄に魅せられたファンも多いと聞く。
 縁仙峡の魅力を尋ねると、間髪を入れずに「見かけどおりの大自然ですたい。山は岩肌の露出した特異な景観ばしとりますし、川もほんなこつきれいかです」と返ってきた。
 しかし、これには以下の補足説明が付く。
 「ばってん、私が子どもんころとは相当変わりました。昔は水量の安定しとったけん、石はこけむして、カワヤナギやショウブが自生しとりましたが、泥流で流されたとです」
 ただ、紅葉の美しさは健在だ。「今年は遅れとりますが、山頂から十日、二十日がかりで降りてくるさまは、そら見事」と奈須さん。
話題が「うげさん」(穿の洞窟)の逸話に及ぶと相好が崩れ、説明にも力が入る。「肥後国誌に緑川は『穿の洞窟より流れ出づる』てあるごつ、昔はここが水源だったとでしょうね。奥は日向の国まで続いとるていいますけん」
 また、当地の言い伝えでは、阿蘇開拓の祖、「タケイワタツノミコト」は穿の洞窟で生まれ育ち、十五歳の成人の時、洞窟内で舞を一指し舞って阿蘇に旅立ったとされる。奈須さんは、その道中のエピソードが今も山の名前や地名に残っていることをとうとうと語る。
 これらの伝承は今でも土地の子どもたちに語り継がれており、民話の古里も健在なりだ。
 だが、近年の暴風雨の猛威にはなすすべもない。「川は埋まったり洗い流されたりを繰り返し、人の力ではどうにもでけんとです」
 頼みの綱は下流の人たちとの交流だ。天明水の会と源流を訪ねた際、当時の会長の濱崎勝さんがわき水を手にすくい、「河口まで届け」と言いつつ宙に放ったという。「実に感動的なシーンだったとですよ」。奈須さんはいつも千客万来の構えで訪問者を待っている。



古里の魅力アピールへ
“不便さ楽しむ”路線も


緑仙峡開発振興会事務局長 緒方慎治郎さん(41)

穿の洞窟を背に「土砂で埋まる以前は3mほど下が
地面だったんですよ」と説明する緒方さん
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 ヤマメ、マスの養魚場を父親と一緒に経営する緒方慎治郎さん(四一)が近年の台風や大雨でこうむった被害は甚大だ。
 「うちは緑川本流から水を引いていますが、取水口は砂でふさがれ、パイプも流されました。このため、魚が酸欠で死に絶え、過去三、四年は全滅でした」
 昔は山が雨を吸収していたが、シカの食害で草木は衰え、「シカの脚叩き」で地面が固められた。その結果、降った雨が直接谷に落ち込み、濁流と化して襲ってくるのだという。「自分の代までは耐えて頑張りますが、子どもに継いでくれとは言えませんね」と寂しげに語る。
 緒方さんは数少ない若手のリーダー格で、緑仙太鼓の継承などで熱心に活動しているが、「若い人は生活に追われて街づくりまで手が回らないのが実情」だ。
 緒方さんが所属する緑仙峡開発振興会は奈須昇さんたちが立ち上げた組織で、当初は「純粋に自分たちで楽しもう」(奈須さん)という集まりだった。
 その後、緑仙峡は宿泊施設「清流館」を皮切りにキャンプ場、フィッシングパークと開発ラッシュに沸き、“村おこし”の先駆者として脚光を浴びた。振興会のスタンスは「楽しもう」から「客を呼ぼう」にシフトしたが、類似のキャンプ場が県内各地にでき始めたのを境に、徐々に客足は遠のいた。今の振興会は制度疲労の感が否めず、前進も後退もままならないようだ。
 緒方さんの胸には昔釣り客が漏らした一言が突き刺さっている。「本当の釣り好きは道なき川で釣りたかとよ」。そのフィッシングパークの遊歩道は台風で根こそぎ流され、今は跡形もない。
 最後に「これからどうしたいですか」という質問を投げた。「僕が小学生のころは何もなかった。不便さを楽しむというコンセプトなら独自色を打ち出せるかも。でも、緑仙峡を盛り上げてきた先輩たちの思いもありますし…」。緒方さんは返答に窮した。答えはいまだ検索中だ。


絶景の下は悲喜こもごも


都市と山村の交流促進
趣味の顧客も囲い込め


山村交流センター「青葉の瀬」支配人 枝尾美芳さん(52)

「昔は一番深いふちで3mほどあったのですが、今は2mもありません」と
語る枝尾さん
                
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 緑仙峡から五キロほど下流に、山村交流センター「青葉の瀬」はある。郷土料理のレストラン、宿泊施設のロッジ、キャンプ場のほか、陶芸や手工芸の体験工房も備えている。
 枝尾美芳さん(五二)が同センターの支配人になったのは昨年四月。一昨年までは二百人の組合員で運営されていたが、公的施設の管理に民間のノウハウを活用する指定管理者制度の導入に伴い、いったん解散。新たに組合員を公募し、現在は十七人で切り盛りしているという。
 青葉の瀬も緑仙峡と同様に台風の被害を受けており、一昨年は上流から押し寄せた砂利で埋まった。「大雨の時に限って予約が満杯なんですよ。泣く泣く逆キャンセルを申し出ています」。昨年、一昨年とも年間五十件ほど逆キャンセルしたという。
 青葉の瀬の良さも「四季を通じた自然です」と枝尾さんは胸を張る。春は山菜、夏はキャンプ、秋は紅葉に秋祭り、冬はイノシシやシカの鍋。
 悩みは繁閑の差だ。夏場のキャンプシーズンはキャパシティーの限界まで達し、年末年始もロッジは予約でいっぱい。しかし、春秋は夏冬に比べて宿泊客が少ない。このため来年の事業計画では月ごとにイベントを打ち出し、集客を図るという。
 インターネットのホームページには「都市と山村の交流をしていただくための施設」とうたっており、訪れた人は無農薬米の稲刈りやクリ拾い、竹飯炊きなど山村生活も体験できる。顧客の半数は県外からで、リピーターも多い。中には夏休みに子ども連れで来て一、二週間滞在し、再度、秋祭りの手伝いに来てくれる人もいるという。
 「お客さんの大半は自然が目当てですが、今後は陶芸や流木オブジェ、木工のギャラリーに力を入れ、趣味や芸術に興味のある人も引きつけたい。ここの自然のとりこになってもらえば、後々の環境保全にもつながりますしね」
上益城・宇城「自然との共生」


次回は12月26日(水)に
掲載予定
 熊本日日新聞社は、環境問題について1人でも多くの人に関心を高めてもらい、具体的な行動につなげようと「くまもとエコモーションキャンペーン」を展開しています。本年度からは、「地域の環境」をテーマに県内を6つのエリアに分け、保全活動を進める団体や個人を通じて、各エリアの環境問題の課題と解決法を探っていきます。


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