メディカルインタビュー 神経内科編

 年齢を問わず、何らかの病気の初期症状として手足のふるえが起こることがあるそうです。ふるえを引き起こす病気や、高齢者に多いパーキンソン病について専門医に聞きました。

手足にふるえが起こる病気にはどのようなものがありますか。

宇山 「ふるえ」というと、高齢者に多い病気の症状と思われがちですが、実は若い人に発症する病気もあります。その一つが、本態性振戦(ほんたいせいしんせん)です。膝の上などに手を置いた状態ではふるえは見られず、両手を上げるとふるえが確認できるのが特徴です。また静止した状態で、イヤイヤをしているように小刻みに顔が左右に揺れるのも、本態性振戦の症状といえます。また、細かい手のふるえの他、多汗や、食欲はあるのに体重が減少するなどの症状が見られる甲状腺機能亢進症(バセドー病)も若い人に発症しうる病気です。また、ぜんそくの薬などの副作用として現れる薬剤性のふるえや、緊張からのふるえ(生理的振戦)もあります。

熊本託麻台リハビリテーション病院       副院長 宇山英一郎氏

高齢者に多い病気でふるえが起こるものは。

宇山 50代~60代に多いのがパーキンソン病です。1817年にイングランドのジェームズ・パーキンソンにより初めて報告されたことから病名がつき、200年となります。今では、65歳以上の750人に1人が発症するといわれており、高齢社会の進展に伴い、今後ますます増えると予想されます。パーキンソン病の特徴は、手をテーブルに置いたとき(安静時)に出やすく、動かすと止まります。また、ゆったりとした動きや筋肉のこわばり、小刻み歩行で気付く人もいます。

パーキンソン病とはどのような病気なのですか。

宇山 中脳の黒質神経細胞が減ることで、神経伝達物質であるドーパミンが作られなくなり、さまざまな症状として現れます。治療は、薬物療法とリハビリを並行して行います。また近年は、ips細胞を使った再生治療の研究も進んでいます。

パーキンソン病のリハビリ治療について教えてください。

宇山 代表的な治療として「LSVT」というリハビリプログラムがあります。大きな動作を促すほか、大きな声を出す発声法を取り入れており、資格を持った理学療法士や言語聴覚士が行います。パーキンソン病を発症すると、声が小さく聞き取れなくなり、表情が乏しくなるなど、日常生活のコミュニケーションに支障を来します。少しでも生活の質(QOL)を向上させる新たなリハビリ治療法として期待されています。今は、リハビリにもさまざまな種類があり、選択の幅が広がっています。詳しくは、専門医に相談されることをお勧めします。