メディカルインタビュー 神経内科編
国内では65歳以上の高齢者の約1割が発症しているといわれる認知症。その中には、手術で症状が改善する「正常圧水頭症」などが潜んでいるといわれています。症状や治療法を詳しく聞きました。
ー認知症と正常圧水頭症の違いについて教えてください。
西村 認知症は、加齢など何らかの原因で脳の委縮が起こり、記憶障害や理解・判断力の障害、身体機能の低下などの症状が出ます。アルツハイマー病が最も多く、脳血管性認知症、特殊なタンパク質が増加するレビー小体型認知症と続きます。厚労省の調査では2015年の認知症患者数は262万人と報告されています。一方、正常圧水頭症は、頭の中に脳脊髄液が滞り、脳が圧迫されている状態です。早ければ60代で発症し、国内に患者は30万人いると推計されています。認知症に似た症状を示すことから、アルツハイマー型認知症と診断されることが多かったようです。
ー症状と治療法は。
西村 まず、①すり足や小刻みでの開脚歩行②集中力や注意力が散漫し、意欲が持てなくなる(認知症に似た症状)③頻尿や尿失禁―といった特徴的な症状が出ている人は要注意です。最近はMRI検査で正確に、かつ簡単に診断ができるようになりました。検査の結果、正常圧水頭症が疑われた場合は、腰椎から注射針で脳脊髄液を抜きます。その直後から歩行の正常化など、症状の改善を確認できたら、腰椎から常時、脳脊髄液を出すシャント手術を行います。術後、リハビリを行うことでかなり改善します。
西村内科脳神経外科病院 理事長 西村 誠一郎氏
ー手術ができる認知症に似た病気が、ほかにもあるそうですね。
西村 認知症に似た症状を起こす慢性硬膜下血腫のことですね。これは、頭部を打撲して、その時の検査では異常がなくても2週間~3カ月後に頭の中に血液がたまることで起こります。血液が脳を圧迫して、認知症に似た症状や頭痛、まひが起こります。進行すると死に至りますが、適切に診断して頭の血液を取り除く手術で良くなります。
ー認知症と間違わないためには。
西村 誤って認知症と診断されると必要のない服薬治療が始まります。認知症はパーキンソン病を併発するケースがあり、歩行障害はパーキンソン病と診断されてしまう恐れもあります。認知症の進行を遅らせる薬や抗パーキンソン病薬を服薬すると、せん妄などの副作用が出てしまいます。しかし、認知症が進行したと誤解され、その症状に本人や家族が苦しめられている場合もあります。何か一つでも気付く症状があれば、CTスキャンやMRI検査を行うことをお勧めします。早期発見と早期の治療が症状の改善に有効です。詳しくは専門医に相談してください。
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