メディカルインタビュー 精神科編
うつ病で精神科の医院を受診する患者さんが増えているそうです。うつ病の診断方法や治療法、家族にうつ病の疑いがあるときに取るべき行動について、専門医に聞きました。
─うつ病について詳しく教えてください。
宮谷 うつ病に関してさまざまなデータがありますが、世界保健機関(WHO)の調査によると、約13人に1人が生涯のうちに一度はかかる病気といわれています。女性に多く、その数は男性の約2倍とされます。一言でうつ病といっても、(1)決断がしにくいなどの脳の機能低下 (2)失恋などをきっかけとする心理的な問題 (3)疲労など環境要因によるストレス―の3つの要素が重なって発症することが多いです。日本では、うつ病による自殺者が一時期、年間3万人を超えていましたが、平成24年から2万人台まで減少しました。自殺者は、40~50代の男性に多いのが特徴です。自殺を防ぐためには、病気を見落とさないことが大切なので、うつ病と診断される症状は幅広く設けられる傾向にあります。
─どのような症状があると、うつ病と診断されますか。
宮谷 うつ病の診断は、その原因とは関係なく、患者さんの状態で判断します。主に、(1)憂鬱(ゆううつ)感がある (2)何事も楽しめない (3)思考力の低下 (4)自己評価や自信の低下 (5)自分に価値がない、申し訳ないと感じる (6)悲観的になる (7)自殺を考える (8)睡眠障害 (9)食欲の異常―の9点にまとめられます。これらの症状が約2週間以上続く場合は、うつ病と診断されます。また、多くの精神科医は、患者さんの入室前後の動作、診察中の表情や声、発する音などを細かく観察しています。さらに、その患者さんから伝わってくる雰囲気といった感覚的なものも、診断の参考にしています。
光の森メンタルクリニック 理事長/院長 宮谷 高史氏
─治療にはどんな方法がありますか。
宮谷 前述したように、うつ病の診断は原因と無関係ですが、治療法は原因によって異なります。主な原因が、セロトニンやノルアドレナリンなど脳の神経伝達物質の乱れ(脳の機能低下)の場合は、抗うつ薬が欠かせません。また、失恋などの心理的な要因の場合は心理療法、疲労などによるストレスの場合には環境調節が大切です。
─家族にうつ病の疑いがある場合はどうしたらよいですか。
宮谷 族だけでの相談は、本人と医師の信頼関係を壊す恐れがあるので、本人と家族が一緒に精神科医院を受診されることをお勧めします。話しにくい家庭内のことも、それが治療のヒントになることもあるため、診察時は包み隠さずお話しください。詳しくは専門医にご相談を。
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