【590号】すぱいすフォーカス – 手軽にできる ぎっくり腰対策

ドイツなど欧州では「魔女の一撃」とも言われるほど、激しい痛みに突然襲われる「ぎっくり腰」。読者の中にも、苦しい経験をした方が少なくないのでは? そもそも、ぎっくり腰の原因とは何なのか、どんなことに気をつければいいのか、なってしまったらどう治せばいいのか─。そんな「ぎっくり腰」にまつわる疑問について、内科医で「ゆがみ取り体操」を提唱する久光正太郎先生に聞いてきました。

教えてくれたのは

医学博士
久光 正太郎 先生

1970(昭和45)年、熊本大学医学部卒業。熊日生涯学習プラザで「ゆがみ取り体操教室」講師を務めるほか、すぱいす紙面で連載。ウェブサイトでは動画も公開中。


ぎっくり腰を誘発する 根本原因の解消が大切

重いものを持ち上げたり、顔を洗うときに腰を曲げたりする動作が、ぎっくり腰になる原因と思われがちです。しかし、その動作によって誰もがぎっくり腰になるわけではありません。つまり動作そのものが理由ではなく、それ以前の段階で、何らかの原因が潜んでいるということです。

ぎっくり腰にならないためには、その要因となる「なりやすい状態」を防ぎ、解消することが最も大切だと考えます。

ではどんな状態がぎっくり腰になりやすいのでしょうか。それは股関節や骨盤、背骨などにゆがみやズレが生じ、左右のバランスが崩れ、周囲の筋肉やスジが引っ張られたままになっている状態です。

筋肉は、伸びたり縮んだりを繰り返し、過度に引っ張られるのを嫌います。左右のバランスが崩れたまま、限度を超えて筋肉が引っ張られると、元に戻ろうと瞬間的に収縮します。これがぎっくり腰のメカニズムです。

まずは股関節や骨盤、腰椎(つい)や頸(けい)椎といった椎間関節のねじれを防止、解消すること、そして筋肉がスムーズに収縮、伸長できるよう、血行を良くすること。この2つが、ぎっくり腰になる根本要因を抑制することにつながります。


日常動作にも気を付け 股関節のストレッチを

上体を左右にひねって重心移動する歩き方や、デスクワークによる長時間の座位姿勢、右足でのペダル操作のために左側に重心をかけてしまう車の運転など、現代人の動きやライフスタイルそのものが、実は骨盤や背骨のズレ、ゆがみにつながりやすいのです。従って、日常での歩き方や座り方に気をつけることも大切です。

加えて、腰を立ててお尻の筋肉を締める動きを意識したストレッチを取り入れると、股関節のゆがみやズレが元に戻り、ぎっくり腰になりにくい状態を維持することができます。

簡単にできる体操をいくつか紹介しますので、就寝前などに実践して、身体のゆがみを少しずつ治していってください。

ぎっくり腰を防ぐポイント

  • 股関節や骨盤、背骨がゆがまないような姿勢を意識する
  • 普段から筋肉をマッサージして血の巡りを良くする
  • 長時間、同じ姿勢を取らない
  • 歩くときや座るときにも、左右バランスよく重心をかける

[久光先生おすすめ]ぎっくり腰の予防と痛みの改善につながる ゆがみ取り体操+α

アキレス腱(けん)伸ばし

(1)

市販の器具がなくても、階段などの段差を利用して、つま先を載せる

(2)

アキレス腱を伸ばすのと同時に腰も立て、骨盤を前に押し出してお尻を締める

動画でチェック!


うつぶせつま先伸ばし体操

(1)

ベッドや布団の上でうつぶせになり、片方の脚を伸ばす

(2)

もう片方の脚の膝を曲げて腰の方へ引き上げる

(3)

交互に10回程度繰り返す。脚を伸ばす際は、親指を外側に向けて真っすぐ伸ばすイメージで

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N字ストレッチ

(1)

陸上のハードルのように片脚を前方へ伸ばして、股関節を90度に開き、もう片方の脚の膝と足首も90度に曲げて「N字」を作る

(2)

伸ばした方の足の小指側をつかんで引き寄せながらハムストリング(太ももの裏側)を伸ばす

(3)

曲げた方の脚は、大腿筋膜張筋(太ももの外側にあるスジ)をマッサージし、外側の付け根をこぶしでもむ

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[日常で気をつけたい]「歩き方」と「座り方」

歩き方

足腰の筋肉を使わず、上体を左右に揺らしながら歩くと、ゆがみが生じやすくなります。腰を立てて背筋を伸ばし、お尻の筋肉に力を入れて締め、足の指で地面をつかむようイメージしながら股関節や太ももの前を伸ばすことを意識するだけでも効果的です。

座り方

腰と背中を伸ばし、坐骨結節(座った時に座面に当たる骨の部分)が片方に偏らないよう、左右両方にバランスよく重心をかけます。デスクワークの際にバランスボールを使用したり、ソフトバレーボールを使って正座し、左右に揺すったりすると重心移動がしやすく、腰や背骨を伸ばす意識づけができます。