[メディカル百科]神経内科編
コロナ禍、人前でせきが続くと周囲の目が気になりますね。症状が長引く場合、風邪や肺炎、ぜんそくなど、数多くの疾患が原因として考えられますが、意外と胃食道逆流症が引き金となるケースもあるようです。
─胃食道逆流症によってせきの症状が出ることがあるそうですね。
せきが2週間以上続く場合、原因は通常の風邪ではなく、肺がんや肺炎、結核といった命に関わる病気、あるいは、せきぜんそく、閉塞性肺疾患、薬の副作用など、さまざまな疾患の可能性があります。そして、意外と多いのが「胃食道逆流症」による長引くせきです。胃から食道へ胃酸が逆流して食道粘膜が荒らされる病気で、胸やけや胸痛、ゲップ、酸っぱくて苦いような液が口の中まで上がってくる呑酸(どんさん)、胃もたれ、食欲低下などを来します。その中で、食道の粘膜に異常が見られるものを逆流性食道炎といいます。
─長引くせきとの関係性は。
逆流した胃酸が喉まで上がると、喉の違和感や痛みを自覚し、悪化すれば食べ物を飲み込みにくくなる他、声がかれます。さらに胃酸が肺に落ちて気管支を刺激すると、胃酸を追い出そうとして、せきが出ます。そのため、せきの原因が胃食道逆流症なら、安易なせき止めの使用はお勧めしません。
─胃食道逆流症の原因は。
①加齢やアルコール、食道裂孔ヘルニアなどによる食道と胃の境目の括約筋のゆるみ②肥満や背中が曲がった姿勢、便秘などによる周囲から胃への圧迫③糖類や脂肪分の多い食生活や暴飲暴食などによる胃酸の過剰分泌などが考えられています。
西村内科脳神経外科病院
院長 濵武 諭氏
─検査や治療法を教えてください。
診断には胃カメラが有効ですが、胃酸の分泌を抑える薬を飲んで症状が改善するかどうかでも判断可能です。効果的なのは、胃酸の分泌を抑える薬や胃腸の機能の正常化を促す薬を服用すること。しかし最も重要なのが、「生活習慣の改善」です。食事の際は食べ過ぎに注意し、脂肪分の多い食事を控えます。食事中や食後は胃を押しつぶす猫背の姿勢にならないように心掛け、さらに食後3時間くらいは横にならないようにしましょう。また就寝時は、敷き布団の下に座布団を2~3枚入れて上半身を高くしたり、左側を下にして寝たりすると食道への胃酸の逆流が少なくなります。もし胃食道逆流症の症状が少しでも見られるようなら、専門医に早めに調べてもらって治療を受けられると安心ですね。
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