メディカルインタビュー 精神科編
うつ病で精神科医院を受診する患者さんが増えているそうです。抗うつ薬を使った治療には、どのくらいの期間が必要なのでしょうか。専門医に詳しく聞きました。
─うつ病について詳しく教えてください。
宮谷 うつ病に関してさまざまなデータが出ていますが、世界保健機関(WHO)の調査によると、約13人に1人が生涯のうちに一度はかかる病気といわれています。女性に多く、その数は男性の2倍に上るとされます。一言でうつ病といっても、①決断がしにくいなどの脳の機能低下②失恋などをきっかけとする心理的な問題③疲労など環境要因からのストレス―の3つの要素が重なって発症することが多いため、治療には適切な診断が必要です。
─治療法は。
宮谷 うつ病の治療法は、原因によって異なり、前述した3要素を考慮して治療を進めます。主な原因が、セロトニンやノルアドレナリンなど脳の神経伝達物質の乱れ(脳の機能低下)の場合は、抗うつ薬が欠かせません。また、失恋などの心理的な要因の場合は心理療法、疲労などによるストレスの場合には環境調節が大切です。
─抗うつ薬を使った場合の治療期間はどのくらいですか。
宮谷 抗うつ薬による治療期間は、「回復までの期間」と「終結までの期間」の2つに分けられます。「回復までの期間」は患者さんによって異なります。それを予測する研究報告はありますが、実際の治療で生かすまでには至っていません。抗うつ薬を飲み始めて1週間前後で症状が和らぎ始める人もいれば、回復までに数年かかる人もいるため、“急がないのがコツ”といえます。また、最初に処方された抗うつ薬で十分な効果が表れるのは3分の1程度の患者さんです。効果が表れない場合は、他の抗うつ薬の追加、あるいは薬の変更が必要となります。薬の種類や量は、患者さんによってさまざまです。
─抗うつ薬は症状が回復した後も飲み続けるのですか。
宮谷 はい。前述した「終結までの期間」ですが、これは回復後の〝維持期間〟のことです。うつ病は、風邪などの病気と異なり、再発防止のために、状態が良くなった後でも同じ抗うつ薬を飲み続ける期間が必要です。自覚症状が改善しても、脳の機能は回復しきれておらず、内服薬を早めにやめてしまうと、再発する確率が高まるからです。一般的には、維持期間を4~9カ月としています。長い期間のように感じられるかもしれませんが、たまに飲み忘れるのは問題ありませんから、神経質にならずにこの時期を過ごすのが望ましいです。詳しくは専門医に相談してください。
光の森メンタルクリニック 理事長/院長 宮谷 高史氏
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