日本人女性の11人に1人がかかるとされている乳がんは、決して他人事ではありません。看護師で、自らも乳がんを経験した西口富士乃さん(44)=山鹿市在住=に、いかにがんと向き合い逆境を乗り越えたのか、お話を聞きました。

●数年ぶりの検診でがんの診断

西口さんが乳がんの告知を受けたのは2011年。36歳の時でした。20代の頃から左胸に良性のしこりがあり、毎年乳がん検診を受けていましたが、結婚後は仕事や育児に忙しく、検診はもとよりセルフチェックもしていなかったそう。「自覚症状もなく身内にがんになった人もいないので、自分はがんにはならないだろうと油断していました」と西口さん。9年ぶりに受けた検診で、左胸に乳がんがあると分かった時にはステージ2で、リンパ節にも転移していました。「定期的に検診を受けていればよかったと後悔しました。看護師でがんのことはよく知っているつもりでしたが、いざ自分が告知されると〝がん〟という言葉の持つ衝撃は想像以上に大きく、内心パニックになりました」

●がんを受け入れ初めて前向きに

告知から1カ月後に左乳房を全摘し、抗がん剤治療と放射線治療を受けました。吐き気や脱毛、全身の倦怠(けんたい)感などさまざまな副作用に襲われる日々。肌は黒ずんでシミができ、眉毛やまつげまでが抜け、想像を絶するほどの容貌の変化に鏡を見るのも嫌になった西口さんは、引きこもり状態になりました。悲しみが怒りとなって家族に八つ当たりすることもしょっちゅうだったとか。「そんなある日、初めて主人に『悲しい』『悔しい』という思いを泣きながらぶつけたんです。そしたら主人も一緒に泣いてくれて…。その姿を見て、あぁ、弱音を吐いていいんだ、甘えていいんだと思ったらスッと肩の力が抜けました」。そのことがきっかけで、がんを受け入れて向き合うことができ、気持ちも前向きになったと言います。

西口富士乃さん。緩和ケア病棟に勤務する看護師。夫、3人の子どもと5人暮らし。

●がんを経験して得たことも

告知から1年後には看護師に復帰した西口さんですが、体力が落ち仕事がとてもつらく、「焦らずじっくり療養することが大切だと実感しました」。4年前には乳房再建手術を受け、現在はホルモン療法を続けながら緩和ケア病棟に勤務。自らの体験を基に講演活動も行っています。「乳がんを経験したからこそ、患者さんの気持ちが分かるようになったし、家族との絆も深まり、当たり前だと思っていたこと全てに感謝できるようになりました」。さらに、新たな目標も。「乳がんケア用品のセレクトショップをオープンする予定。私自身、治療中におしゃれなケア用品を身に着けることで笑顔になれました。がんになったとしても、病人らしくではなく自分らしく生きてほしい。がんになった人が、病気と向き合い前を向くきっかけとなれる場所をつくっていきたいと思っています」

西口さんは、多くの人に乳がんについて知ってもらおうと、自身の体験をもとに講演活動も行っています

西口さんは、多くの人に乳がんについて知ってもらおうと、自身の体験をもとに講演活動も行っています