メディカルインタビュー 特別版―進化を続ける歯科技術
歯の成長力を生かした矯正治療
お子さんの歯並びが気になるという親御さんは少なくないと思います。ただ、矯正を始めたいけれど、治療法や費用面のことなど、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。ホワイト歯科健軍総院長の磯野誠一先生に、最近の小児矯正治療について詳しく聞きました。
現代の食生活が歯並びの悪さに影響も
─歯並びの悪い子どもが増えていると聞きますが、どのような原因が考えられますか。
磯野 歯が並ぶスペースが足りないために、歯が重なって生えてきたり、おかしな方向から生えてきたりというお子さんが、近年増えていると思います。こうした症状が現れる背景として、現代の食生活も要因の一つになっていると考えられます。例えば、硬いリンゴにかぶりつくような、前歯を使って物をかみ砕くということがほとんどなくなりました。今の子どもたちの食事は、食べやすいように小さく切ってあったり、軟らかく調理されたりしたものが増え、きちんとかむという習慣が少なくなりつつあります。そのため、顎の骨がしっかりと成長せず、正しい位置に歯が並ぶスペースがないというわけです。また、このような食生活は、顎の骨だけでなく、口の周りの筋肉や舌の成長にも影響を与えているといえるでしょう。
治療のスタートは7~8歳くらいが目安
─子どもの矯正治療はいつ頃から始めるとよいでしょうか。
磯野 人の歯の成長スピードはそれぞれ異なるため、いつがベストのタイミングなのか一概には言えませんが、目安として、下の前歯4本が永久歯に生え替わる7~8歳くらいにスタートするとよいでしょう。この時期はまだ顎の骨が軟らかく、成長段階にあります。矯正器具を使い、かみ合わせを誘導してあげることで、痛みなどの負担感もなく、歯が入るスペースをつくることができます。小児矯正では、骨格のずれを正常な発育方向に修正していき、永久歯が生えるスペースがない場合、骨を徐々に拡大させて永久歯が生えるスペースを確保していきます。治療は、小学校1年生くらいに始めて、すべての歯が永久歯に生え替わる6年生くらいまでに完了する方がほとんどです。この段階で問題が残る場合は、ワイヤー装置などを使った本格的な矯正治療に移行していきます。
─治療に使われる子ども用の矯正器具はどのようなものになりますか。
磯野 自分で取り外しできる拡大装置(下図)があります(自由診療)。装置にはネジが付いており、これを回すと装置が横に広がり、1カ月で約1mm、骨が拡大していきます。この装置は夜間と午前中、約14時間以上の装着が必要です。食事や歯磨きの際などは、簡単に取り外しができますので、学校での使用も安心です。顎の骨が広がり、歯の生えるスペースができたら、次は歯の列を並べる装置を使って治療を進めます。
ホワイト歯科健軍 総院長 磯野 誠一 氏 山鹿市出身。1997年鹿児島大学歯学部卒業。同年ホワイト歯科勤務。2018年から、ホワイト歯科健軍、戸島、西廻りバイパスを統括するホワイト歯科健軍総院長。
STEP1
歯列に合わせた拡大装置を作ります
STEP2
上顎に、自分で取り外しできる拡大装置を取り付けます
STEP3
中央のネジを回すことで、装置が横に広がります
STEP4
歯の成長力を利用して、歯並びを整えます
歯を大切にする習慣付けのきっかけに
─医院選びのポイントは。
磯野 矯正治療は、虫歯のように何回かの通院で終了する治療と違い、数年間という長い治療期間を要します。通院は1~3カ月に1度くらいの頻度になりますが、医院選びの際は、医師に気軽に何でも相談できるか、料金なども含めきちんとした説明を受けられるかなどを総合して、納得できるところを探すことが大切です。今は、最初の相談は無料で応じてくれる医院もありますので、確認の上、ご相談ください。
─矯正期間中に並行して、他の歯の治療もできますか。
磯野 矯正治療期間中は定期的な通院が必要です。そのため、もし虫歯などが見つかれば早期に治療に取りかかれますし、良い口腔環境を保つための食習慣の見直しやブラッシングのアドバイスなどを行うこともできます。歯並びは、見た目の美しさはもちろん、健康な体を維持するためにとても大切です。歯並びが悪いと、磨き残しができて虫歯になったり、歯周病になるリスクが高まったりします。さらに、物をうまくかみ砕くことができないために唾液の分泌が悪くなり、胃腸に負担をかけることにもなりかねません。矯正治療の期間を、親子で歯を大切にするための習慣付けの期間と捉えてみてはいかがでしょう。夏休みから矯正治療を始めてみようという方は、まずは小児矯正治療をしている歯科医院にご相談されることをお勧めします。
バランスの良い歯並びで健康な暮らしを
小児矯正治療の流れ
初診 治療内容や費用についての説明
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精密検査 歯型、口の中や顔の写真、頭のレントゲン写真などの撮影
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診断・治療計画の決定(4~12歳)
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早期治療(Ⅰ期) 歯が入るスペースをつくるなど、成長の力を借りた治療
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定期観察 1~3カ月の間隔で、顎の成長、歯のチェック、装置の調整を行う
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再 診 断(12歳ごろ) 永久歯に生え替わったら再検査をし、問題がなければ終了
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本格治療
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