親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

大人を頼れない子 あなたの身近にも

あったかいご飯にお布団、困ったことがあったらなんだかんだ言って助けてくれる親…。そんな当たり前が当たり前でない子どもたちがたくさんいることを、皆さんはご存じですか?

「トナリビト」は親を頼れない子ども・若者を支援する団体です。相談窓口や、安心して過ごせる居場所スペース、臨時宿泊ができるシェルター、中長期的に支援を行う自立支援シェアハウスなどを運営し、行き場のない子の支援を行っています。

イラスト/さいき ゆみ

親を頼れない子には、いろいろなケースがあります。経済的な理由で親と一緒に暮らせない子。幼少期から施設で育つ子。虐待やネグレクトを理由に保護される子。親との関係がうまくいかず、家から逃げ出す子―。しかもそんな境遇にある子は、遠い国の遠い町のお話ではなく、実はすぐ近くにいる「となりのあの子」だったりするのです。

もしかしたら、自分の子どもが通っている学校で、クラスに普通にいるあの子。近所で良く見かけるあの子。近くのコンビニで働いているあの子。本屋さんで立ち読みをしているあの子。そんな身近な「あの子」が、実は家に帰れない事情を抱えている場合も少なくありません。親に殴られていたり、ご飯を作ってもらえなかったり、お金がなくて物を盗んだり。でも人には言えず、本人は必死に普通の生活を装っていたりします。その結果、周りから見ていても全く気付かない…なんてことが普通に起こってしまうのです。

普通に見えるかもしれない彼らに共通しているのは、「いざというときに頼れる場所がない」ということ。ちょっとしたときに、頼れる親がいない。支えてくれる家庭がない。安心していれる場所がない。それって、実はとても大変なことなのです。

生きていくためには住む場所が必要です。ご飯が必要です。でもそれらを手に入れるためには、契約だったり、お金だったり、大人の力がなければどうにもならないことがたくさんあります。それなのに、家庭に事情を抱えた子たちは、肝心の大人を頼ることができません。頼ることができないだけならまだしも、親から「生まなきゃよかった」「出ていけ」「甘えるな」と強制的に世の中に押し出されるケースも多くあります。携帯の契約も物件の契約もできず、制度のはざまでにっちもさっちもいかない状況に追い込まれてしまう未成年の若者たち―。その中で、犯罪や風俗にしか行き場がなく、身をゆだねてしまう子も当然出てきます。そして残念なことに、それを隣りから眺めて気づかないのが、私たち大人なのです。

だからこそ私たちが目指しているのは、困っている「となりのあの子」を、隣にいる人が支える…、そんな当たり前のことです。困ったとき、「トナリビトさんに行けばどうにかしてくれる!」と子どもたちが頼ってくれる場所になることです。

次回からは、そんな「となりのあの子」とトナリビトの日常をお届けしていきます♪


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/