親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

いつも変わらない愛情 注いでくれる人がそばに

この季節は、こどもの日に母の日・父の日と、家族の記念日がたくさんありますね。家族とお祝いしたり、日頃の感謝を伝えた方もいるのではないでしょうか。

私は母の日にうれしいプレゼントをもらいました。
「祈恵さんが私のお母さんでしょ?」と、シェアハウスの入居者の一人がかわいい花柄のギフトをくれたのです。
うれしくて、思わずにやけてしまいました。

トナリビトに相談にくる若者たちは家庭に事情を抱えています。
母の日や父の日に、まっすぐに誰かに「いつもありがとう」と言うのがなかなか難しい子ばかり。
特に赤ちゃんの頃から施設で育った若者は、『生んでくれたお母さん』と『育ててくれた人』が違います。そしてこの『育ててくれた人』も、最初に預けられた乳児院から児童養護施設への移動や、担当替えなどで、人生の中で何度も変わっていく経験をします。
親に育ててもらった私には想像がつかない、大変な経験です。
そんな中で、誰が自分にとって「親」なんだろうと、心にぽっかりと穴があいたような不安を気持ちを抱えている子も少なくありません。

イラスト さいきゆみ

どんな子にとっても、親は特別な存在です。
不思議なもので、どんなつらい経験をしていても、子どもは親を求めます。
虐待やネグレクトを経験した若者を支援する中で、「どうしてこんなことをされて、親をかばうんだろう? なんで嫌いにならないんだろう?」と思うことがあります。そのたびに感じるのは、どんな親でもやはり親は親ということ。たとえ殴られたことがあっても、「死ね」と言われ続けていても、やっぱり親に受け入れられたい、親に認められたい、親に愛されたい…。
子どもが持つ、この本質的な欲求はなくなることはないのです。

ただそれと同時に、たとえ血のつながりがなくても、「家族」になることはできるとトナリビトは信じています。
親の代わりになることは、他人にはできないかもしれません。
でも、いつも変わらない愛情を注いでくれる人がそばにいる-。それが親を頼れない若者にとってどれほど大切なことか。
親から与えられなかった愛情を他人が注ごうとするとき、もしかしたらそこには何倍も、何十倍もエネルギーが必要になるかもしれません。親のたった一言で満たされる心を満たすために、何カ月も、何年も時間がかかるかもしれません。

でも、それでいいのです。親の代わりになれなくてもいいのです。私たちが注ぐ愛情は決して「0」にはなりません。時間がかかっても、変わらない愛情を注ぎ続けることで、若者たちの内側には確実にその思いは積み重なっていくのです。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/