親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

新しい環境で試練に直面 孤立させず愛情で包んで

すっかり夏本番になりました。この季節は4月に新しい環境に巣立った若者たちにとっても次々と試練がやってくる時期。トナリビトにも、支援している若者たちからたくさん相談が届きます。

「学校辞めたい」「仕事辞めたい」「食べるものがない」…。
新しい環境での生活は誰にとっても初めは大変。頼れる家族がいなかったり、帰る家がなかったりする若者たちにとってはなおさらです。
失敗しちゃいけない!と気を張って頑張っていたけれど、その気持ちがこの時期にプツンと切れてしまう…。

そんなとき支えてくれる家族がいれば、ちょっと家に帰って休憩して、お母さんのおいしいご飯を食べて…なんてことができます。

でも親を頼れない若者たちは、それができません。
先日全国で初めて行われた社会的養護経験者向けの調査では、回答してくれた若者の4分の1が身近に支援者がいなかったり、経済的に赤字の状態で生活をしたりしていることが分かりました。

また親を頼れない若者たちは保証人がいないことも多く、寮や社宅に住んでいるケースもあります。「学校・仕事を辞める=住むところがなくなる」若者にとって、小さな挫折が、その後の人生を大きく左右することになりかねないのです。

イラスト さいきゆみ

「そんなこと言わずに頑張れ!」「最近の若者は…」と思うかもしれません。でも人からは見えない重いプレッシャーを独りで抱え頑張ってきた若者は、叱咤(しった)激励だけでは上を向けません。

長年地域で子ども・若者を育ててきた文化の中では、良かれと思って厳しく背中を押す大人もいます。それが必要なときもあります。
でも昔は一人の若者を支える命綱が、親から、祖父母から、隣のおじちゃんから、駄菓子屋のおばちゃんから、何本もつながっていたかもしれません。
現代社会の中で、昔のように彼らを支える命綱はどこにあるでしょうか? もしかしたら、背中を押した大人とのつながりが、たった1本の命綱なのかもしれないのです。その一本を切られてしまったら若者たちはどうするでしょうか?支えを失った若者たちは簡単に自分の人生を投げ出してしまいます。

現代の若者たちは、忍耐することが苦手で、傷つきやすく見えるかもしれません。甘えているように見えるかもしれません。でもその裏には、家庭や社会の中で頼る大人が見つからず、自分が頼るべき命綱を必死に探している、彼らの姿があるのです。彼らを孤立させず、そばにいること。まず愛情で包んであげること。そんな心の深さを、この社会に取り戻していけたらと思う今日この頃です。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/