親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

「心の鎧(よろい)」を脱いで 自然体で向き合う

先日テレビで、言葉を理解できない赤ちゃんは実は周りの物事をよく観察していて、自分なりに理解している-という話が流れていました。
時に子どもたちの目は、どんな科学的なデータや言葉よりも物事の実態をよく捉えるものです。

それは10代の若者も同じこと。その大人が信頼できるのか、嘘をついていないか…。多感な時期の若者たちは、それは見事に大人の裏表を見透かすことがあります。

特に親との確執を抱えていたり、施設を転々としてきたりした若者たちは大人の嘘に敏感です。
大人の都合でたくさんの大人たちの間を渡り歩いて来た若者は、相手が自分の人生を通過していくだけの存在か、最終的に自分を守ってくれる存在かをすぐに嗅ぎ分けます。
一度「心を開かない」と決めた大人には、かたくなに心を閉ざす場合もあります。その判断は、最初の数秒で下されることもあれば、大人が発したたった一言の言葉がきっかけになることもあります。

イラスト さいきゆみ

私たち支援者にとって、若者たちから信頼を得られるかどうかは何よりも大事な部分です。
信頼関係ができなければ、頼られることも、SOSを出してくれることもありません。
関係が途切れてしまえば、そこから私たちができることは「ゼロ」に戻ってしまうからです。

その子が人生の最大のピンチに陥ったときに、連絡してくれる相手になるためには、どうすればいいのか?
それはちまたのハウツーや、一朝一夕に身に付くことではありません。多感な時期の若者と関わる支援者として、ずっと模索し続けていくテーマでもあります。

私たちが若者たちと話すときに大切にしているのは、何よりもまず「自然体であること」です。
子どもや若者たちは大人の合わせ鏡のようなもの。大人が緊張し、身構えれば、若者も緊張して身構える。逆に大人がリラックスしてありのままで向き合うと、若者たちは徐々に向き合ってくれるようになります。「自然体」には、すごい力があるのです。

私たちはみんな、大なり小なり自分を守るための「心の鎧」をもっています。
それが小さな盾くらいならいいかもしれません。
でも人との関わりの中で何枚も何枚も鎧を着込んだ若者は、動きづらいし、心が疲れてしまうこともあります。
何が自分の自然体なのか、分からなくなることもあります。お互いが自然体になるためには、まずは大人が鎧を脱ぎ捨てることです。

「鎧、脱いだ方が楽かも」―。そう思ってもらえるような、すてきな自然体でいたいなぁと思います。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/