親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

短い言葉に込められた 若者の思いを見逃さない

若者支援で避けて通れないもの…、その一つがジェネレーションギャップです。
私たちトナリビトのメンバーはスタッフもボランティアも比較的若い世代が多い(と思っている…)のですが、それでも最低7歳から10歳程度の年の差があります。

若者が好きなものを一緒に見たりすることも多い毎日。
さらに若者たちとできるだけ同じ視線で話すためにも、若者が使うアプリを使い、流行のチェックをします。
おかげで、今では若者たちがはやりの曲を歌い出すと、管理人の私が間髪入れずに次のフレーズを歌えるようになったほどです。
私が若者たちと会話をしていると、それを聞いた他の方から「え? ○○って何のことですか?」と言葉の意味を聞き返されることもしばしば。

中でもよくツッコミをいただくのが、若者言葉です。
「ワンチャン」「ぴえん」「ラグる」「~しか勝たん」「草」などなど。
書きながら、これももう古いなぁと思ってしまうほど、若者言葉は急スピードで生まれては消えていきます。

イラスト/さいき ゆみ

イラスト/さいき ゆみ

若者たちの言葉のあり方についてはいろいろな考えがあっていいと思います。
しかし、実際トナリビトで支援している若者たちは、コミュニケーションが苦手な子もたくさん。
また生い立ち上、安心できる環境で学校に通うことができた子ばかりではありません。
社会的養護出身者の若者たちの中には、発達障害を抱えた子も一定数おり、「言語」の部分に苦手意識を持つ若者も少なくありません。

「きつい」状態のときに「きつい」と言えない場合や、一度にたくさんのことを言われると理解が追い付かなかったり、頭が混乱したり…。「A君が、Bした」という単純な文は平気だけど、「A君が、Bしたら、Cになった」というように少し複雑になると、途端に難しく感じてしまう子もいます。

そんな若者にとっては、自分にとって不快なことが全部「イライラする」でしか表現できなかったり、面白いことは「草=(笑)」、悲しいことは「ぴえん」で終わったりしてしまうこともよくあります。
言葉通り受け止めると、彼らの言いたいことが全く見えてこないことも多いのです。
だからこそ、若者に寄り添う私たちは若者言葉や文化を苦手と感じて敬遠するのではなく、積極的に彼らの世界観を取り込んでいくことも実は大事な支援の一部分だと思います。
どんな形の言葉であってもそこに込められた若者たちの思いを見逃さず、受け止められる支援者になりたいものです。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/