親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

来春から成人年齢引き下げ 親を頼れない18歳には…

来年の4月、成人年齢が18歳に引き下げられますね。
飲酒やたばこの年齢制限は変わりませんが、大きく変わるのは契約時の制限。
成人年齢引き下げ後は、18歳から賃貸住宅や契約の契約時に親の同意がいらなくなるため、若者たちは自分で自由に契約ができるようになります。

親を頼れず、児童養護施設等を18歳で卒業する若者にとっては、これは大きな変化。
社会的養護下で支援を受けられるのは基本18歳までなので、18歳になり社会的養護下から巣立った後には、未成年であるにもかかわらず社会からの支援が断ち切られてしまいます。
そのため自立しなければならない若者たちは、この「未成年」であることでさまざまな壁にぶつかります。
18歳から20歳までの未成年として過ごす2年間には、本人たちだけでは乗り越えられない問題がたくさんあるからです。

その代表的な問題が、親の同意です。以前こんなことがありました。

施設卒の18歳の子が「ジムに通いたい」というので、一緒に入会に行きました。すると受付の人から「未成年なので親権者の同意がいります」と一言。その子は生まれてすぐ施設に預けられ、親とは一度も会ったことがありません。「なぜ親権者じゃないとダメなんですか?」と聞くと、「分かりません。そういうルールなので…」との返事。思いもよらぬ壁に、「自分は20歳になるまで、会ったこともない親に縛られなきゃいけないの?」と本人はすっかり気落ちしてしまいました。

また別の子は体調を崩し緊急搬送された先の病院で、「保護者の同意がなければ検査ができない」と。この子も幼少期から施設で育ち、親との関係は良くありません。絶対に居場所を親に知られたくない、という本人の意向もあり、私たちから実親に連絡を取るわけにもいかない…でもこのままでは必要な医療も受けられない。

イラスト さいき ゆみ

どちらも私たちが説明し、保護者代理としてサインをすることでなんとか解決しました。
しかし説明しても、「決まりなので」と言われることが少なくありません。
ましてや社会に出たばかりの若者自身が、自分の生い立ちの事情や、社会の制度について説明をすることはとても難しいことです。
このような事情を抱えた若者がいるということが社会的に「知られていないこと」そのものが、実は一番高いハードルなのです。

成人年齢引き下げで若者たちは18歳から自由に契約ができるようになり、自分で決められることが増えていきます。
ただその半面、未成年として守られる期間が短くなるのも事実。
内容を理解しないまま高額な契約をして失敗したり、最悪、詐欺被害に遭ったりしてしまっても、これからは成人として、その責任を負っていかなければなりません。

ただでさえ、18歳という年齢で社会に放り出される若者たちにとって、自立していくのは簡単なことではありません。成人年齢引き下げにより、「親」という縛りがなくなり選択肢が増える一方、「自己責任」という言葉が今まで以上に若者たちの肩に重くのしかかるようになるのです。
そんな彼らの自立を支えていくためには、私たちも柔軟に変化していかなければいけないなぁと、思います。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/