親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

皆さんには心から「好き!」と思えることがありますか?
トナリビトでは親を頼れない若者たちを支援していますが、どんな困難な状況の中でも若者たちがきらりと輝く瞬間があります。
それは「好きなこと」をしているときです。

私たちは支援の中で、何げない会話だったり、ばかばかしいことで一緒に笑ったりする時間をとても大切にしています。
そんなふとした瞬間に、若者たちの本当の「好き」には出合えることがよくあるからです。

ある若者は先日、実は手芸が大の得意だということが発覚しました。
また別の若者は自慢のコーヒー道具でおいしいコーヒーを入れるのが大好き。私たちにもよくごちそうしてくれます。「上手!」「おいしい!」と声が上がると、照れくさそうにしながらうれしそうな笑顔を見せてくれます。

「好きなこと」があるかどうか? これは実は私たちの人生でとても大切なことですよね。
好きなこともやりたいこともなくイライラしていた若者が、「これ好きかも」に少しずつ巡り合っていくうちに見違えるように変わっていく姿を何度も目にしてきました。

実際、トナリビトに初めて相談に来たときには、「別にやりたいことなんてない」「人生どうでもいい」「なんかに熱中するなんて時間の無駄」「そういうの恥ずかしいから」と言う若者はたくさんいます。
でもそんな若者たちと話をしていて思うのは、本当にやりたいことがない若者なんて本当はいないということ。

一見そんな若者たちは無気力で、やる気がないかのように見えます。でもずっと耳を傾けていくと、彼らの言葉の裏には「本当は認められたい」「愛されたい」「好きなことをやりたい」「自分の人生を生きたい」という痛いほどの叫びが込められているのです。
自分の好きなことを「好き」と言えない背景には、一番身近な存在であるはずの親に認めてもらえなかったり、否定され続けたりしてきた過去がある子も少なくありません。
傷つきたくない、失敗したくない、だから無気力・無関心でいるほうが楽だ、と思ってしまう子もいます。

イラスト/さいき ゆみ

安心していれる場所と、自分が熱中できることがあれば、若者たちはどんどん自信をつけて輝いていきます。
自分にでもできることがある。人に褒められることがある。楽しいと思えることがある。
小さなことかもしれませんが、そこで生まれた自信は若者たちの力となって蓄えられていきます。
それがいつか、つらいことや悩みを乗り越える自分自身のエネルギーになっていくのです。
今日はどんな若者の「好き!」に出合えるのかな? 毎日ワクワクしています。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/