親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

トナリビトでは、サポートしている若者が二十歳を迎えると、個別に希望を聞いてお祝いをすることにしています。
今でこそ成人年齢は引き下がりましたが、20歳は人生の大切な節目の一つ。
「一緒に祝ってくれる親がいない」ということに、寂しさやを抱える子も少なくありません。

「子どもの二十歳を祝わないくらいなら、産まなきゃよかったのに」とか、「別にあんな親に祝われたくない」と口にする子がいます。
でもいつもその言葉の裏には、なんだか言葉にならないモヤモヤを抱え、でもそれを認めたくない自分と葛藤している姿が垣間見えるのです。
「本当はお祝いしてほしかった」「普通の家みたいに当たり前に…」「せめて一言だけでも連絡してほしい…」。
どんな親でも、やっぱり親です。
産みの親から連絡を待ち続ける若者たちの姿を見ながら、私たちにできることは何なのか? どうしたら少しでも愛を感じられる誕生日になるのだろうか ?と、自分たちの存在の小ささや無力さを感じます。

でもそんな中でも、「0より1」と、自分にできる精いっぱいのお祝いをしようと、本人たちの希望をもとに誕生日祝いを決めています。

イラスト/さいき ゆみ

イラスト/さいき ゆみ

みんな違う人間ですから、希望もそれぞれ。
近年では20歳を迎えた若者と、居場所スペースでピザパーティーを開いたり、街のおしゃれなバルで一緒に飲んだり、人生初のフレンチのコース料理を食べに行ったり、深夜0時にサプライズでお祝いをしたり…。
マンツーマンが良いという子もいれば、皆でワイワイしたいという子もいます。

でもみんな共通しているのは、お祝いをしたときのうれしそうな笑顔。
支援する側・される側、とかではなく、一人の大人同士として向き合う時間は、若者たちにとっても私たちにとっても特別な時間です。
私もこの特別な時間は、伴走者という枠を超えて若者と楽しむようにしています。

20歳のお祝いを経て日常に戻っていくと、親との関係だったり、仕事のこと、学校のこと、友達のこと、恋人のこと、体調のこと、お金のこと…本当に悩みは尽きません。
でもこの一瞬一瞬の特別な思い出や人との関わりが少しずつ積み重なって、彼らのこれからの歩みを支えていく土台になればいいな、と思っています。

過去の記事はこちらから
https://spice.kumanichi.com/category/human-culture/tonarino-anoko/


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/