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「家族」であってもなくても 変わらない唯一無二の関係性【となりのあの子Web版 Vol.24】

イラスト/さいき ゆみ
イラスト/さいき ゆみ

親を頼れない子ども・若者を支援する団体「NPO法人トナリビト」代表の山下祈恵さんが、子どもたちと過ごす日々の出来事をつづります。

祈恵さんは、若者たちにとってお母さんみたいな存在なんでしょうね」。
若者の支援をしていると、必ず言われるのがこの一言です。
先日も、ある若者が「あなたにとって祈恵さんはどんな存在?」と聞かれていました。

この質問は実はとっては難しい。
ある若者は、「お母さん」、別の子は「お姉さん」。
別の子は「そういうんじゃない」と言いますし、「そういう枠にはめられない」と言う子も。

私もこれは一言では言えません。
特にシェアハウスで暮らす入居者との距離感はとても近いのでみんな娘・息子だと思っていますが、中にはおいっ子・めいっ子くらいの距離感の子もいれば、妹・弟みたいな子、時には友達になる子もいます。
ここに血のつながりがあると、生物学的に「これ」と定義が決まるのですが、私(を含むトナリビトのスタッフ)と若者たちの関係は定義しづらい。

特に、実の親やきょうだいとの関係が難しい若者の場合は、家族がいないわけではないのだけれども、家族らしい関係性や交流がない、ということもあります。
こういう若者の場合、「家族」というものの定義はとても複雑だなぁと感じることがあります。
面倒を見てくれた大人だったり、施設の先生だったり、別の親族だったり、トナリビトだったり、親よりも親らしい存在がいて、でも血がつながった家族ではなくて…。

私にも、親との関係で一番迷走していた時期に寄り添ってくれた大人や、きょうだいより近しい関係の友達がいた時期があります。
でもそこにはやっぱり、親だけど親じゃない、きょうだい以上だけどきょうだいじゃない、とジレンマを感じる瞬間があって、その葛藤は消えることはなかったなぁと思います。

家族ってなんだろう? 血のつながりってなんだろう?

これはきっと、親や家庭に葛藤を抱える人はみんな一度は持つ疑問なのではないでしょうか。
血のつながらない人間関係は、生物学的なつながりもなければ法的な根拠もなく、目にも見えないので不安になります。
「親代わり」とか、「お姉ちゃん的存在」とか、目に見えないからこそ名前をつけたくなりますし、名前をつけて枠にはめると、少し安心するのかもしれません。

でもそういう枠にはまらなくても、やっぱり私と若者たちの関係は「家族」だなぁと思いますし、「家族」であると同時に、一人の人間と人間の大切な関係だと思っています。

「お母さんみたいな存在」とはとっても温かくてすてきな響きですが、最初「お母さん」を求められていた関係性も、その子が人生を歩んでいく中で「お母さん」が必要なくなる日が来るかもしれません。
でもどんな形でも、その子とのつながりは変わらない。
私はそう感じています。
家族であってもなくても、その子との唯一無二の関係性を大事にしていきたいです。


PROFILE
山下 祈恵

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。公式サイトはhttps://www.tonaribito.net/

記事内の情報は掲載当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。

イラスト/さいき ゆみ

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この記事を書いた人

NPO法人トナリビト代表。親を頼れない子ども・若者や社会的養護出身者を対象に自立支援シェアハウスIPPOを運営する傍ら、相談窓口・居場所スペース、就労支援ネットワーク、学習支援、普及啓発活動等を通じて支援を行っている。

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