その1「独身時代」

出産を終え、疲れた心と傷ついた体を癒すため、
息子としばらく実家へ里帰り。
部屋が2階にあるので、テレビ、ビデオはもちろん電気ポットや電話、
冷蔵庫まで準備してくれていた。
かつて自分の部屋だったそこには、独身時代のベッドもそのままにしてある。
そのとなりにはベビーベッド。

不思議だね、ここに自分の赤ちゃんを連れてくることになるなんて、
ここで生活していた頃は夢にも思わなかった。
ほら、ここでお母さんは育ったのよ。
…と感慨深い思いにかられる。

そしてふとドアの方を振り返ると、
そこには等身大の「ル○ン三世」の立て看板が!?
ち、ちょっとこれ何!と母に聞くと
「あんたが好きだからって、パチンコ屋の知り合いが
わざわざ持ってきてくれたのよ」

なんてこと。

「もっと早く教えてくれたら、(看板に)立ち会い出産してもらえたのに!」。

愛していた人まで独身時代に戻ってしまうのだ。


その2「大騒ぎしてごめんね」

実家で上げ膳据え膳の日々。

小ぢ郎のため、お風呂の時以外は階下に降りることも出来ない。
退職して家にいる父は、毎日昼食やおやつを運んでくれる。
時には用もないのに部屋に来て孫の顔を見に来る。

久しぶりの赤ん坊なので、かなりうれしいらしい。

ある日、公園で伐採していたのをもらってきたと、
花のついた大きな桜の枝を抱えてきた。
外に出ることが出来なかったので、
また桜の花を見ることが出来てうれしかった。
息子を抱っこして、部屋の中で記念撮影をしたりと春を満喫。
ところが。
その頃から息子の顔に発疹がぽつぽつと出始め、
母と原因を探ろうと考えていると、
もしや桜にかぶれたのではという話が出た。
がっくりと肩を落とす父。

何もわからない息子にごめんね、じいちゃんが悪かったと
謝りながら、桜を処理。
しかし。病院で聞いてみると
「お母さんの体のホルモンがまだ残っているため出てくる物です」
と濡れ衣だったことが判明。

大騒ぎしてごめんね、おじいちゃん。


その3「はい拭いてー、洗ってー、」

産後1ヶ月まで入浴許可が下りないため、
お風呂に入れるのはおばあちゃんの仕事。
ベビーバスを使ってよ、といっても
「あんた達の時もお姉ちゃんの子の時もそんな物は使ってない」
と断固拒否。腰にかなり負担が来るらしい。

そういえば病院での沐浴指導でも、小ぢ郎と共に腰がかなり痛んだ。
まあ、世話になっている身であれこれ言うのも何だし、
ここは任せようと思っていた。

が。

実家生活も終盤に近づいた頃、やたら目やにが出るので、
「顔を拭くときのガーゼは一回ごとにちゃんと洗ってる?」と聞くと
「そんなことしてない」との返事。
その時ばかりは「だから目やにが出るのよ!」と叱りつけた。

その日のお風呂をのぞき見すると、
「あんたのお母さんはうるさいねー。
はい拭いてー、洗ってー、はい拭いてー、洗ってー、」
とブツブツ言いながらやっていた。

もっと早くから注意しておけば良かった。


その4「カンガルーになりたい」

天国のような実家での生活に終わりが近づき、
息子との新生活に向けてまず自宅のバル○ン焚きから始めました。

妊娠中に掃除をさぼりまくったせいで、ダニの温床と化している我が家を一掃せねば。
と同時にお掃除をなんと専門業者に外注することに。

エアコン、お風呂場、ドラム換気扇、ワックスがけetc…出費はかさむが、
産後の身体はとにかく大事にと言われるので甘えさせてもらった。

息子を母に預けて久々の我が家に戻って掃除をしながら、別の部屋でじゅーじゅー乳搾り。
今まではそばにいたのですぐにぱくっとくわえさせてたのに、
いないので搾るしかない。
搾りながら、今頃どうしてるかなあ、泣いてないかなあ等と考える。
ほんの何時間とはいえ、子供と離れるのは心も体もつらい。
こんなことで職場に戻れるのかな?もう一回お腹に戻らないかしら。
そしたらずっといっしょなのにね。

カンガルーをうらやましく思ったある日のことでした。