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8話 「変わったのは誰?」

診断が下りた次の日から続く、穏やかな私。
もう、怒らない。

いけないことをしたときも、怒鳴らず目を見て「だめよ」と簡潔に伝える。
妹との関係性を説明するときには、幼い頃から培った「漫画」を武器に
棒人間を書いて相手の考えていることを解説。
以前なら感情的になりそうなところでも、息子目線でとらえるようにすると
不思議と怒らずに同調し、気持ちに沿うことが出来る自分がいる。

そして1日1回以上の「愛してる」と「大好き」。
普段、平日は仕事でふれあう時間が少ないだけに、
その愛情表現が持つ力は大きかったと思う。

ある日、副園長が私のそばへやってきて
「たかぞうくん、すごく良い子になりましたね!! 今までと全然違う。
びっくりしました。何かなさったんですか?」と、不思議そうに聞いてきた。
今思えば、何かいい薬でももらったのでは、と思ったのかもしれない。

そう、それくらいたかぞうは、あの告知の日から激変した。
いや、正しくは変わったのは「私」だ。

あの日たかぞうは隣でミニカーで遊んでいただけ。
何を聞いたわけでも、知ったわけでもない。
変わったのは私。
イライラした嫌な感情を持った私にたかぞうは反応していただけで、
結局原因は私にあった。

「たかぞうが悪いわけではなかったんです。私だったんです。
変わったのは、私の息子に対する態度ですよ」
そうにっこり笑うと、先生は少し不思議そうな顔をした。

抱きしめて、たかぞうの全てを受け入れる。
答えはこんな簡単なことだったんだ。

<第1章 了>


第1章を終えて

監修・熊本託麻台リハビリテーション病院 小児科部長 大谷 宜伸先生 より

ちょっとユニークな診断告知でしたが、お子さんへの接し方がわかってよかったですね。実は、どの子にもすてきな持ち味があるし、頑張ってもうまくできないこともあります。でも、周りの人たちがお子さんの特性(特別な個性)をよく知り、良いところは伸ばし、苦手なことは「こうしたらいいよ」と教えてあげて大切に育てていけば、たとえ障がいがあっても、その子らしく生きていけるし、すてきな「おとな」に成長するはず。診断告知のステップも、お子さんの持ち味に応じた丁寧な子育てつながるといいですね。(注:アスペルガー症候群は、今では広く「自閉スペクトラム症」の中に含まれています)

悪いことをしたら叱ることも必要。特に、人に迷惑をかけたりケガを負わせたりすることは絶対にダメです。トラブルになった要因を振り返り、次にうまくいく方法を考えて、お子さんに分かるようにお手本で示すことも効果的ですよ。

★発達についてのご相談は、各自治体の担当保健師さんへ