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10話 「Aさんのこと その2」

それぞれに得意なこともあれば不得意なこともある。
それが分かっていながらも社会と共存していくには
周囲と同じことができるスキルが必須条件で、
みんなと同じことができないと非難を浴びることになる日本社会。

でも、個人の努力ではどうすることもできない
それぞれの「特性」がある。

ネットや本で、息子と同じ障害をもつ青年たちの悩みに触れるたび、胸が痛む。
「今はまだ幼いから」で済ませられることでも、
大人になった時にこの子は一体どうなるんだろう。

そんな思いが大きくなっていくのと同時に、私のAさんへ対する態度が
不思議と穏やかになってきた。
どんなに横柄な態度をとられても、原稿を渡すとき、指示をもらうとき、
ついニッコリほほ笑んでしまう。
そう、「意識して」そうするのではなく、「自然と」丁寧な言葉遣いになってしまっていた。
今までは用事が済んだらさっさと逃げるように離れていたのに、
短い時間ながら仕事以外の話をしたり、
何気ない会話が増えてきた。

そんな中で、彼の状況も分かってきた。
とてもご両親を大切にしていること、
休日はボランティア活動をしていること。
パソコンが得意なこと。
気が付くと、大嫌いだったAさんを、別の角度から見ることができるようになっていた。
それは、私の中で起きた大革命だった。

(つづく)