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21話 「体育係」

今日はシャツを着るのに、えらく時間かけてるなあ。
「ほら、早く準備しないと間に合わないよ。何してるの?」
モタモタと進まない着替えにしびれを切らして声を掛けた。
「お母さん、オレ今日体育あるんだ」
うん。そうね。
「やりたくないのに、体育係にさせられたんだ」
え。

※イメージ

「オレ、学校行きたくない」
そう言うと、その場に突っ伏して声を上げて泣き始めた。

ああ、とうとうこの日が来た。
息子のような子には、大声をあげて怒鳴る体育教師は、
学校の中でも一番恐ろしい存在に違いない。
そしてそれは他の子にとっても同様で、
クラスでも一番ヘタレで要領の悪い息子は、
他の子がパカパカと担当教科の係を決めて行く中で
まんまと一番嫌な係に当たってしまったのだろう。

怒鳴られれば怒鳴られるほどパニックになり
指示通りに動くことができなくなる息子にとって、
一番苦手で一番不釣り合いな係になってしまった。
しかし、だからといってみんなが嫌がる係を
今さら変わることは不可能だろう。
「嫌なことでも、誰かがやらなきゃいけないんだよ。
決まったことなら頑張ってやってみようよ」
どんな慰めの言葉をかけても、なだめても、
床に顔をうずめたまま泣き続ける息子。

その日は諦めて、学校を休むことにした。
1年の1学期もまだ終わってない。
こんなに早くこの日が来たかと、
これからの日々を憂いながら
ただただ息子を抱き続けた。
(つづく)