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22話 「優しかったB君」

怒られたり怒鳴られることに対して極度の恐怖を感じる息子にとって
中学校の中で最も恐ろしい存在の体育教師。
その担当係になったことで、順調だった学校生活に陰りが出てきた。

息子の場合、とにかく怒られまいとどんなに一生懸命頑張っても
生来の不器用さと挙動不審な動き、
たくさんの会話の中から自分に向けられた言葉だけを
聞き取るのが困難な聴覚のせいで
期待される反応を示すことができないことが多い。

※イメージ

それが「わざと」ではないことは、なかなか理解できないだろう。
親であり、いろんな情報を探しまくり
障害について勉強している私でさえも「なんで!?」と思うことはしばしば。

ましてや、それは同年代の男子ならなおさら
自分とあまりに違いすぎる息子に対して違和感を持つのは当然だ。

「最初は一緒に頑張ろうな、って言ってくれて優しかったんだ」
と息子が泣きながら言った彼の名はB君。
B君は2クラス合同授業で隣のクラスの体育係とのことだった。

「でも、俺が言われたことをできないから」
「何か俺に指示を出してるのはわかるんだけど、
何のことを言ってるのかわからなくて」
「だんだん怒るようになってきたんだ」

学校へ行く時間はとうに過ぎ、
私が出社する時間が迫る中で
ぽつり、ぽつりと絞り出すように話す息子。

「最初は優しかった」
「でもこの前、襟をつかまれて」
そう言ってまた泣き始めた。

私も泣くしかできなかった。

(つづく)