31話 「目線が嫌なんだ」
たかぞうは3年生になり、家庭教師の先生も代替わりとなって
後輩の方を紹介してもらった。
魔法の付箋のおかげで、1日20ページの宿題をこなすたかぞう。
先生方もあの手この手で飽きない工夫をしてくれ、
なんとか高校受験までこぎつけようとしていた。
※イメージ
そんな中で、「模試を受けたほうがいい」とアドバイスをもらった。
「やっぱり受験当日のシミュレーションとしても、今の学力を確認するためにも
模試は受けたほうがいいと思います」
と言われ、受験生ビギナーの私たちは
それはぜひとも!! と申し込むことに。
当日車で会場まで送って、たくさんの子たちが集まっているのを見て
ほー、みんな偉いなあ…と人ごとのように感心した。
しかし、帰ってきたたかぞうの暗いこと暗いこと。
「どうしたの? 難しかったの?」
しまった、自信を無くしたのかもしれない。
思いつめた顔をしたまま、たかぞうはポツリと言った。
「(模試会場の)教室に入った瞬間、みんなが一斉にオレを見たんだ」
ふんふん。それで?
「…その目が、すごく嫌だった。」
…? 見られただけなんでしょ?
てか、ドアが開いたら普通に誰でも見ない?
「でも、オレはそれが嫌なんだ」
そして地球人の私は何度も確認する。
「見られただけなんだよね? そのあとなんか笑われたとかじゃなく」
「でも、オレはもうあの目を見てしまったから
もう平気ではいられないんだ」
おーっと。まてまて。
受験の日もまさしくそんな感じなんじゃないですかー!?
「見られる=舞台にあがる」ことに快感を覚える私との
あまりにも違いすぎる感覚に、またも戸惑うばかりだった。
(つづく)
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