42話 「アルバイト」
通信制高校のリズムにも慣れた頃、
調子に乗った私は「せっかくなんだから髪とか染めちゃいなよ~」だの
「バイクの免許取ったら~?」だの言えるようになってきた。
もう、こうなったら自由な時間を楽しむ方が得だ。
でも、真面目な我が子は「お母さん、何言ってるの?」と
キビキビ課題をこなす。ふん、つまらん。
※イメージ
しかし、せっかく時間もあることだし
欲しいものもチラホラ出始めたようで、
「アルバイトしてみようかな」と言い始めた。
高校を辞めた時、一番心配したのが
「社会との断絶」だったので、その言葉はとてもうれしかった。
すると、自分で求人情報誌を集めて
興味のあるところにマークを付け、
あれよあれよという間に自分で電話をかけて面接に行き、
飲食店の厨房でアルバイトを始めることになった。
その成長ぶりに感動した私たち。
しかし、そのバイトも3日持たなかった。
別の飲食店にも紹介で行ったけど、そこも3日で辞めた。
どちらも、「他人と比べて自分の仕事の出来なさ」が
自分で我慢できなかったらしい。
他人から非難されたわけじゃない。怒られたわけでもない。
他の人が何気なくしている簡単なことでさえ出来ない自分が、
恥ずかしく腹立たしかったようだった。
「なんで俺はこんなことも出来ないんだ」
そう下を向くたかぞうの背中を見るのは
本当に苦しく、どう声掛けをすればいいのかわからなかった。
~第4章 おわり~
第4章を終えて
監修・熊本託麻台リハビリテーション病院 小児科部長 大谷 宜伸先生 より
夢と希望にあふれて迎えた高校生活のはずでしたが、想定外の出来事だらけでつらかったですね。進学など新しい環境になじむには、“根回し”が必要。本人の発達特性や支援のポイントを家庭と学校が共有し、対応策を練っておくとよかったかもしれませんが、支援体制が整っていない環境で苦しい日々を過ごすより、通信制の高校に早めに方向転換できてむしろ良かったと思います。
発達障がいの子は、物の見方や感じ取り方がとてもユニークなので、周囲からはよく精神年齢が低いのではと誤解されやすいようです。中には知的障害を伴うお子さんもおられますが、他人の言動にとても傷つきやすくデリケートなので、悪ふざけや冗談を真に受けてしまい、いつまでもつらい記憶が残ってしまうこともあります。やはり、周囲の人たちが発達障がいについて正しく理解し、適切な支援をしてあげることが大切ですよね。だって世の中いろんな人たちが一緒に生きていかなくちゃいけないのですから。
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