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52話 「たかぞう(仮名)のこれから」

ほぼ決まりだと思っていた専門学校への進学の道がいったん保留になり、
突然どこにも属さなくなってフリーになったたかぞう。

さて、これからどうしようと思っていたら
子供のころからお世話になっている義兄が、
勤務している会社の社長に直談判してくれて
データ入力のアルバイトに来てみないか、と声をかけてくれた。

※イメージ

その職場では、アルバイトで何度も失敗しているたかぞうが
安心して一歩を踏み出せるように、
下準備に最新の注意を払って下さっていた。
なんと、ちょうどテレビで発達障害の番組があるのを知って、
職場の皆さんが番組を見てくださったとのこと。
それだけでも涙が出る思いだったのに、
ドキドキの初日、はじめてパソコンの前でデータ入力作業をしたとき、
みなさんがすごくほめてくれたらしいのだ。

ほくほく笑顔で帰ってきたたかぞう。
どうする? 続けてみる? と恐る恐る聞くと
「来週も行くって言ったから、一応行くことにするよ」と言ってくれた。
そうして、週に2回の勤務体制が決まっていった。
その職場では、たまにイベントを催していて近所の人をまねき
くじ引きやポップコーンをふるまったりする時がある。
そこでもお手伝いをする、と聞いてびっくり。

ドキドキしながら会場につくと、社員の方が
「あ! たかぞうくんあそこにいますよ! 見てあげてください!」
「たかぞうくん頑張ってますよ!」と次々声をかけてくださり、
遠くでサポートを受けながら、お客さんに対応しているたかぞうが目に入ったとたん
もう私の涙腺は崩壊していた。
文化祭も経験したことがないたかぞうにとって、
そこでの笑顔は特別に輝いて見えた。

告知を受けたあの頃からだ。
Aさんとの貴重な体験をしたときに、
「将来 たかぞうが社会に出た時に
私の様に笑いかけてくれる人がいますように」と
祈り続けながら、人に接してきた。

その想いが通じた気がした。

こうして、理解ある方たちに守られて
たかぞうがアルバイトを続けてもうすぐ2年になろうとしている。
今、たかぞうは自宅でプログラミングの通信教育を受けている。
これからどんな未来が待っているのか
誰にもわからないけど、

私は息子の成長が楽しみで仕方がない。

      2019.01.04 星の王子さま <おわり>


最終章を終えて

監修・熊本託麻台リハビリテーション病院 小児科部長 大谷 宜伸先生 より

 告知がうまくいってほんとによかったですね。「周りの人たちへの感謝の想い」を添えてじっくりお伝えになったことが成功の鍵でしたね。やっぱり大切なことは「周囲の理解と支援」と痛感します。お子さんのライフステージの中で、幼児期から就学や進学、そして社会参加へとさまざまな困難に直面しましたが、そのたびに、ご家族や周りの人たちが特性を理解し、こうしたらうまくいくかも、といろいろ配慮してくださったこと、その積み重ねがあって今の成長があるんですよね。
 星の王子さまの連載、ハラハラドキドキしながら楽しく読ませていただきました。ありがとうございました。

最後にひとことコメントです。

 この世の中、私たちはいろんな人に支えられています。たとえ発達障がいの特性があったとしても、仲間外れにすることなく、みんなそれぞれ変わっているからおもしろい、と違いを自然に受け入れ、助け合える世の中になればいいですね。たかぞうくんには、これからどんな未来が待っているのかわからないけれど、ぜひ好きなことや興味のあることを見つけ生かしながら、自分らしく伸び伸びと生きていってほしいと心から願っています。