【487号】古民家レストランへようこそ
大きな梁(はり)や柱、漆喰(しっくい)の壁。窓には、味わいのあるガラス。100年以上も前に建てられた古民家がリノベーションされ、新しい魅力を持ったカフェやレストランに生まれ変わっています。今度の週末は、秋の気配を探しに郊外へ。おいしい料理を楽しみながら、のんびり、ゆっくり過ごせるすてきな古民家を紹介します。
倉庫を改装した離れでゆっくり過ごせる山鹿市の「cochi design and cafe」
懐かしさの中にある新しさ
空間を楽しむ
古民家といえば、古いという印象だけが強くなりがちですが、“その家にしかない良さ”に注目してリノベーションされると、“新しさ”が宿るようです。木材や土壁、かやぶきの屋根。自然の素材だけで造られた空間は心地よい空気で満たされ、時間がゆっくりと流れていきます。
緑に囲まれた玄関までのアプローチ。さりげなく掲げられているおしゃれな看板。ドアを開けると、広々とした土間や畳の空間、高い天井があり、室内には年代物のテーブルや椅子が配置され、古いたんすや棚を、優しい明かりが照らします。窓の外の風景が見える席、ちょこんと飾られた花や、ランプシェードなど隅々まで、お店の主がしつらえた意匠も楽しみましょう。
木、土、竹、漆喰…。自然素材だけで造られた空間。そこに流れる空気は少し冷んやりとしてゆっくりと時間が流れます。
自然食レストラン 郷乃恵[satonomegumi](大津町)
築120〜130年
幼い頃過ごした実家をリノベーション
祖父母の家のような落ち着ける空間
緑に囲まれて、どっしりと立つ古民家の表札の名前は『郷恵』。オーナーの渡辺ヤス代さんが「父の名前です。ここは、私が育った家なんです」と教えてくれました。長く空き家でしたが、1年ほどかけてリノベーション。かやぶきの高い天井、太い梁や柱が、120年以上前に建てられた当時のままよみがえりました。「暑い時でも、わら屋根で涼しい。風通しが良くて、店内の空気は屋外と全く違います」と渡辺さん。来店した若い人も、〝祖父母の家みたい〟〝昼寝したい〟と言ってくれるそう。「人が集まる場所になって、父も喜んでいると思います」
“田舎のばぁちゃんの料理”と謙遜するメニューは野菜中心。ボリューム満点なので、「おなかをすかせて来て、ゆ〜っくり食べてくださいね」と笑います。
広い土間には大きなテーブル。奥は板張りと畳敷きの空間
メニューは、だご汁か豚汁を選べる郷乃恵御膳(1500円)のみ。かまど炊きの白米と玄米。無農薬栽培された野菜を使い、天然醸造の調味料で作る煮物や漬物などの小鉢が並びます。だご汁もたっぷり
「人がたくさん来てくれるのがうれしい」と、渡辺さん
かやぶき屋根の高い天井
kinon cafe & arts(和水町)
築250年
四季の移ろい感じられる室内
九州に2棟しかない 貴重な2つ屋根の造り
「うちの店には空調設備がないんですよ」と笑う、店長の上妻野乃花さん。夏は窓を開け放して扇風機のみ。「冬は寒いけれど、薪ストーブの周りに人が集まってきて会話が弾みます」。お店にいながら四季を感じるようになって、ストレスがなくなったとも。
店舗は菊池市七城町から肥後民家村内に移築された旧緒方家。江戸時代中期に建てられた2つ屋根の造りで、九州内に現存するのは2棟だけだそう。「梁は木の曲線をそのまま生かしてあり、女性っぽい」と上妻さん。そのせいか、母胎にいるような安心感、居心地の良さを感じるそう。「ここは長居が基本。畳の上でゆっくりと、子育て中の方も子どもと一緒にくつろいでください」
Facebook @kinon.producedbykozuma
Instagram @kinon09
*営業日はFacebookかインスタグラムで確認を
全国に残る代表的な古民家を移築復元した肥後民家村は、散策にもおすすめ。「kinon cafe & arts」は南門からすぐ。毎月第4日曜には、同店が中心となって「小さなマルシェ」(12時〜16時)が開催されています
店内には、上妻さんの父で、木彫家の上妻利弘さんの作品を展示販売。皿やトレーなども利弘さんの手によるものです
プチプチした食感が人気の玄米スコーン(季節のジャムとバター付き)500円、自家製果実シロップ650円
かやぶきの天井と、2つの建物を中央でつないである独特の造りを見ることができます
食材にもこだわったカフェメニュー
cochi design(コチ デザイン) and cafe(山鹿市)
推定築150年
空き家の診療所をカフェに
縁側で感じた風に感動 オシャレな空間に再生
住宅・店舗コーディネーターでもあるオーナーの山部絵理さん。「縁側に座った時に感じた風が涼しく、心地よくて」と、空き家になっていた診療所兼住宅と出合った時の感動を話します。自らの経験を生かして柱や天井、扉などをそのまま残してリノベーション、新しくてオシャレな空間に再生されました。壁に和紙を貼ったり、診療台をテーブルにしたり。新しいものと古いものが混在する居心地の良さが魅力です。提供される料理は弟の中村充志さんの担当で、「母が育てた野菜を中心に使っています」。山部さんは、「以前住んでいたご兄弟が訪ねて来てくださって、『みんなが来る場所になってよかった』と言ってもらえたんです」とうれしそうです。
Facebook @cochidesignandcafe
Instagram @cochi_eri
家族連れやグループがゆっくり過ごせるよう、倉庫を改装して造った“こちはなれ”
店の前にある五右衛門風呂の中には金魚が
スペシャルトマトパスタ(前日までの要予約)のランチセット(1566円)。通常のセット(1404円、予約不要)は、4種類からメインを選べます
柔らかな光が差し込む店内にはテーブル席や小上がりがあります
山部さんと中村さん、子どもたち
店舗情報
- 住所
- 山鹿市鹿本町庄486‐1
- TEL
- 0968-46-6133
- 営業時間
- 11時〜17時(OS16時半)
- 休業日
- 月曜・第3火曜(月曜が祝日の場合は営業)
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