【560号】熊本伝統のねば納豆 工事郎が手作り 「こるまめ」なっと、作ろうかい。

冬の熊本の風物詩の一つだったのが「こるまめ作り」。熊本弁で納豆のことです。以前は農家では収穫が済んだもみがらの山で、ワラに包んだ納豆を手作りし、「もうあたがえは、こるまめは寝たかいた?(もうお宅では納豆はできた?)」があいさつ代わりでした。今はめっきり見なくなった昔ながらの「こるまめ作り」に、熊本と熊本弁を愛する工事郎さんがチャレンジしました。

わらづと手作り、毛布で寝かせる 昔ながらの納豆ができるまで

1~2月はこるまめ作りの季節。工事郎家では、冬は、わらづと(わら容器)で寝せた(作った)手作り納豆をよく食べます。とはいえ実は、これは全て叔母さんからもらったもの…。というわけで、昔ながらのこるまめ作りを「計184歳姉妹」に教わりました。その様子を熊本弁を交えてお伝えします。


(1)材料はこがしこ

大豆9合(約1.2kg)と、市販の納豆1パック。大豆は前夜から水につけておき、圧力鍋に入れ600ccの水で煮ます。


(2)難しか、つと作り

豆を煮る間を利用して「わらづと」作り。これが「やおいかん (難しい)」。

稲刈り後のワラを上部だけ結んで山形の「わらとべ」にして1週間ほど乾燥させたワラが「わらづと」の材料。ワラには軟らかい「はかま」が付いているので、穂の方をつかんだら手を「猫の手」にしてすき取ります。このきれいになったワラを編んでいくのです。


(3)やっぱ年の功

まず2本のワラを取り、先を結びます。間に2~3本ずつワラを取り、穂と根元が交互になるよう挟み、幅が25㎝ほどになるまで編んでいきます。編み終わったら両端を縛っていらない部分を鎌で切り落とし、「わらづと」が完成。

ばあちゃんの鮮やかな手つきに・・・

昔の人は何でんしきらすなあ

飛べて言うなら、空も飛ぶバイ。
もうすぐタイ


(4)準備のでけたぞ

ちょうどゆで上がった大豆をざるに上げ、うちわで冷ましながら市販の納豆と混ぜ合わせます。さっとぬらしたわらづとにゆでた大豆を入れ、新聞紙でくるみ、紙の米袋(30kg袋)に放り込みます。これで準備完了です。あとは「寝せる」だけ。

なして水でぬらすと?

水気のなかと、ワラが豆の水分ば吸うて硬うなるけんタイ

はー、大した知恵なあ


(5)寝するだけタイ

毛布を3枚ほど重ね、この間にわらづとの入った米袋を挟んでおくと、納豆菌の働きで次第にホカホカしてきて2晩で納豆の完成です。

朝から作って、寝せとったら夕方には、ほほらぬっかもん。納豆菌の力ちゃ大したもんなあ

朝からは湯気の立って、毛布はジックリなるとばい。
干さんと使われんとだけん


もみがらかる、ホケの出よった

昔はもみすりの終わると、庭にはふとーか、もみ殻の山ができよりました。その山にワラで作った袋の、かまげ(カマス)ば入れて、その中に納豆のわらづとば、突っ込むとです。

霜で真っ白くなったもみ殻の山に、納豆を入れた一角だけはホヤホヤ白かホケの立っとるとです。暮れから作るとですが、やっぱ、冷え込むごつならんと、良か納豆はでけません。わらづとだけの納豆菌でもでけますばってん、市販の納豆ば混ずると、「寝せ損ない」ば防ぎます。

まさかこれを読んで作る人はおらんと思いますが、納豆も子どもも失敗ば重ねて育つ。われながら名言なあ。


[ちょこっと"豆"知識]「こるまめ」は清正公起源?

「こるまめ(納豆)」の起源には諸説ありますが、県人としては加藤清正説を取りたい。1592年の文禄の役で海を越え出兵した加藤軍団。煮豆を馬の背に載せて進んでいると、俵と馬の体温のせいもあり発酵が進んで良いにおいが。清正公が俵を開けると納豆になっていた。

「良いにおい」とは書きましたが、独特のにおいで、最初に食べた人は尊敬します。よくよく、兵糧に困っていたのでしょうね。この「香ばしい豆」が、「香の豆」つまり「コルマメ」の語源とか。うーん、あんまり見事すぎてしっくりこない気もしますが。独特のにおいは好き嫌いが分かれ、九州でも納豆好きな県と嫌いな県がはっきり分かれるようです。


工事郎の熊本弁講座

文中に出てくる熊本弁を解説します。

【あたがえ】

あーたの家。君んち、ですたい。漢字で書くと分かりますねえ。「自分がえ」も君んち。熊本弁は相手の立場に立って言います。「君んちに遊びに行く」は「自分がえ、遊びに来る」。

【つと】

ふくらはぎ。ワラで作ったつとが「わらづと」とは言い得て妙。「箱根駅伝の選手は、さぞつとのこわったろ(凝っただろう)」

【こがしこ】

これだけ。「こぎゃしこ」とも言います。「あれだけ」は「あがしこ」。「あぎゃしこしてやったつに、恩も知らんで」もおんなじ。

【なして】

なぜ。「なぜあなたは京都に行くの」は、熊本弁では「なしてあたは京都さん行くとかいた」。うーん、熊本弁だと今ひとつ、別れを惜しむ趣に欠けますねえ…。

【ほほらぬくか】

じんわりと温かい。こたつの中に手を入れて温かい、よりももっと、ほのかに温かいくらい。この加減が微妙ですなあ。

【もみすり】

熊本弁ではありませんが知らない人が多いので。稲の穂についているのが「もみ」。穂から実を外す作業が「脱穀」。さらにゴムローラーの付いた「もみすり機」で茶色い殻を外す作業が「もみすり」。

【ホケ】

湯気。「ホケんごたるやつ」はつまらぬ御仁。今はあまり聞きませんが「ホケだし」は「たまの楽しみ」転じて「おごり」。「きょうは社長のホケだしてバイ」


癖になる珍味「干しごるまめ」

「干しごるまめ」は文字通り「こるまめ」を干したもので、ふりかけ代わりにご飯にかけたり、茶漬けにしたり。独特のにおいはありますが、癖になる味です。市販の納豆でも簡単にできる、熊本伝統の珍味作りを紹介します。

  1. 作り方は簡単。納豆に塩をやや多めに混ぜます。紙にメリケン粉(小麦粉)を薄く広げ、その上に大さじ1杯ぐらいずつ、納豆を置いていきます。
  2. 半日ほど天日干しして表面が少し乾いたら納豆を広げ、メリケン粉にまぶします。最初は2~3粒くっついていますが、箸で外し、2日ほどかけて乾燥させ1粒ずつにします。
  3. これを1~2月の弱い冬の日差しに当て、4、5日干すと「干しごるまめ」の出来上がり。

食べてみて、硬過ぎず、軟らか過ぎない程度に。3月になると黄砂が降るし、日差しが強く、急に乾き過ぎていけません。作り方は簡単ですが、何かとデリケートなのです。

子どもさんと一緒に熊本古来の味、「干しごるまめ」にぜひチャレンジしてみてください。本当、おいしいんだから。