トップアスリートとして活躍し、現在は運動指導などに当たっている川上優子さんがつづる、心も体も元気になれる“サプリメント・コラム”。

心と体を磨く"Y"の法則

筆者プロフィル

1975年、松橋町(現宇城市)生まれ。信愛女学院高から沖電気宮崎に進み、アトランタ(1996年)、シドニー(2000年)両五輪の陸上1万メートルに出場し、アトランタでは7位入賞。現在、一般社団法人スポーツコア代表として、ランニングを通じた地域貢献に取り組む。


Vol.28 自分の言葉を持つ子を育てるには我慢も必要

私が率いるチームに、本年度3人の新メンバーが加わりました。チームのHPに彼女たちの自己紹介をQ&A形式で掲載しようとしたら、ある質問に3人とも同じ回答があり、少し違和感を覚えました。

「今後どんな選手を目指していますか?」と尋ねられ、全員が「みんなに応援してもらえるような選手」と答えたのです。一見すると何の問題もないようですが、私には抽象的過ぎて何だかスッキリしません。

「みんなに応援してもらえるような選手」と言われても、その選手がどんな場面で、どんな走りをしたいと思っているのかを想像できません。恐らく本人たちも漠然としたイメージしか思い描けていないのでしょう。そうした具体性の無さもさることながら、私が最も危惧するのは、全員が同じ回答だったこと。育った環境も競技レベルも全く違うのに、なぜそんなことが起きるのか…。

自分自身のことなのに当たり障りのない模範回答しかできないのは、自分の意見や考えを言葉や文章にする習慣が足りていないから。ただ、その責任の一端は、私たち指導者を含め、保護者、会社の上司など、人材育成に携わる側にもあります。

若い子たちが、うまく表現できずに口ごもったり、言葉を絞り出すのに少しぐらい時間がかかっても、自分の言葉で言い切るまでじっくり待つ我慢が必要なのです。

大分県竹田市の久住高原クロスカントリーコースでの練習のひとコマ。選手同士もソーシャルディスタンスを保って走っています