武士の美意識反映した多様なデザインと造形
「馬験(うまじるし)」って何か、ご存じでしょうか? 戦国時代、戦場で大将の周りに立てた大きな幟(のぼり)旗のことです。また武士は、個々が甲冑(かっちゅう)に立てた「指物(さしもの)」という小旗も携えていました。
一見、戦場では邪魔なようにも見えますが、敵味方の区別、武将間の位置や連携、活躍の誇示など、武士にとっては必要なものだったのです。ですから装飾を目的とはしていません。しかし、生死をかけた場所で使うものだけに、日本人独特の美意識を反映した造形感覚と発想が示されています。そんな優れたデザインと機能性を持った旗や馬験、指物などを紹介する「戦場にはためく験」展が、島田美術館で開かれています。
紺地有字大馬験
鎌倉時代後期の流れ旗が描かれているのは「蒙古襲来絵詞」(模本)。武士の時代の初期から「験」が使われていたことが分かります。「豊臣家時代馬験」「徳川家譜代馬験」「細川家一門馬験」(いずれも折本)は、江戸期にまとめられたものらしく、まるでカタログのよう。多様なデザインと造形に目を見張ります。「紺地有字大馬験」(乳付旗)は、近世細川家初代・藤孝(幽斉)が使ったとされるもの。縦170×横192cmの大きさに驚かされます。
鎌倉から江戸時代までの、験の歴史や使われ方が分かるだけでなく、武者の感性や心映えまでも想像できる展覧会です。
(すぱいす・嶋)
豊臣家時代馬験(部分)
Information
会期:~9月2日(月) 10~17時(入館16時30分まで)
休館日:毎週火曜(祝日は開館)
入館料:一般700円、大学・高校生400円、小・中学生200円(保護者同伴小学生は無料)
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