『男はつらいよ』シリーズ全50作 深い愛情込めて魅力をつづる

「国民的映画」として親しまれてきた名物シリーズ『男はつらいよ』。主役の寅さんこと車寅次郎を演じてきた渥美清さんが、1996年に亡くなったためシリーズは終了しました。しかし、シリーズ1作目が公開されてから50年目に当たる昨年末、50本目となる新作『お帰り 寅さん』が公開され、現在も大ヒット上映中です。最新の映像技術を駆使して、過去のシリーズの名場面を織り込みながら、おなじみのキャラクターたちの現在のドラマを通して、寅さんという人間に迫った作品です。

その新作公開に合わせて出版されたのが、シリーズ全50作についてつづられたこの本です。とはいえ、ネットで調べたら分かるようなことだけを並べた、ただのガイド本ではありません。著者である娯楽映画研究家の佐藤氏は、長年にわたり深い愛情を持って寅さん映画について研究してきた人物。各作品の魅力を深く細かくつづっているので、読み応えが違います。その上、シリーズの歴史をそのまま一つの物語としてまとめてあるので、読み終わった時には何とも言えない満足感と感動が込み上げてきます。

これはもちろん、シリーズや寅さんというキャラクターに対する著者の深い愛情が込められているからです。しかし、それが個人的な思い入れに終わらず、最終的に「なぜ寅さんと『男はつらいよ』シリーズがここまで日本人に愛され続けているのか?」という疑問に対する一つの答えにもなっているのです。そこが、この本の最も素晴らしいところなのです。

654ページという大作ですが、久しぶりにスクリーンに帰ってきた寅さんの魅力を、改めて教えてくれる一冊です。
(フリーライター・上妻祥浩)

Profile

さとう・としあき
構成作家、ラジオ・パーソナリティー。娯楽映画研究家として、昭和の喜劇人の魅力を新聞連載やコラムなどを通して紹介しているエンターテイメントの伝道師。『石原裕次郎 昭和太陽伝』など著書多数。

Information

「みんなの寅さん from 1969」
著者/佐藤 利明
出版社/株式会社アルファベータブックス
定価/3800円+税

文化放送「みんなの寅さん」公式サイトで、3年間にわたって毎週連載された大人気コラムを中心に集成した、究極の「寅さん本」