ある日、「すぱいす」編集室に1本の原稿が届きました。それは運動未経験の40歳主婦「のり」さんが来年2月の熊本城マラソンに出場することを決め、奮闘する様子が書かれていました。「面白い」。一読して、採用を決めた編集デスク・陣。読者エッセーのコーナーを「すぱいす」ウェブ上に新設しました。果たして「のり」さんは、天守閣への42.195キロへ無事に出場、完走できるのでしょうか。迫真の同時進行ドキュメントです。

応募は突然に

『熊本城マラソン初挑戦枠に当選しました』

9月半ば、1通のメールを受け取った私は、複雑な感情を抱いていた。

私はマラソンが大嫌いだ。昔からずっと、マラソン大会が苦痛だった。みんなに大きく遅れをとり、泣きながら走っていた。
そんな私が突然、熊本城マラソンを走りたい、完走したいという強い感情に襲われた。今年40歳。人生折り返しにきて、何か無謀な挑戦をしたくなったのだ。
とはいえ、フルマラソン42.195km。未知の世界だ。走れるのだろうか? 不安でいっぱいの中、夫や小4の娘、両親や友人に打ち明けた。「頑張ってね」の声もあれば「信じられん」や「無謀ね」の声もある。娘には「無理でしょ」と一蹴された。
とりあえず、今の体力を知るために、近所の公園を走ってみることにした。ジャージーに着替えると、見慣れない姿に、我が家の柴犬にほえられた。いやいや、不審者じゃないし。犬にまでダメ出しをされているようで、気がめいる。
公園に着き、走り出した私はがくぜんとした。体が動かない。重い。公園1周をやっとの思いで走った。その距離約600m。それは40年間で一番長い600mだった。昔の嫌な思い出がよみがえる。マラソンが苦痛だった、大嫌いだった。

私は後悔した。まず走ってから応募すればよかったと。今なら絶対に応募しない。あまりにも無謀だ。でも腹をくくるしかない。大嫌いなマラソンを、あと5カ月も練習しなければならないこと、その先に約42kmがあること。しかし、誰に言われたわけでもない、自分で決めたことだ。私は無謀な自分と戦うことを決意した。