3歩進んで2歩下がる

気合いを入れるために、まずは形からとウェアやシューズを買いそろえた。いっちょ前の姿がなんだか照れくさい。
練習を続けられるかが心配だったが、意外と大丈夫だった。そして、日々2km、3kmと少しずつ走れるようになっていった。

しかし、練習開始から2週間、出ばなをくじかれた。右足甲の疲労骨折。故障は、いつかするだろうと思っていたが、早すぎる。私の体は2週間しかもたなかった。焦り、悔しさ、情けなさ。そんな感情が入り混じった中に、練習からのしばしの解放に少しだけ喜ぶ私がいた。

完治後、練習再開した私の体は、心なしか軽かった。もしや療養中にアップデートされたのか。
走るのは嫌いで、泣きながら走ったこともある。日々の練習はつらかったが、おっくうではなくなってきた。面白いように成果もでてきた。なんと10km走れるようになったのだ。5km以上走ったのは人生初めて。本当に嬉しく、感動さえ覚えた。ようやく先が見えた気がした。フルマラソンはこれの約4倍。なんだか走れそうな気がする。

10km走れたことに気を良くし、調子に乗った私は、毎日10km走った。待ち構えていたのは、2度目の故障だった。今度は左足首じん帯損傷。体の悲鳴を感じていたのに、調子に乗ってしまった。これにはさすが焦りしかない。私には時間がない。とにかく走りたかった
お世話になっている整形外科の先生は、マラソンが趣味で大会出場経験も豊富だった。診察よりもマラソン談議の方が長かったが、それが、私の焦る気持ちを穏やかにしてくれた。「療養も立派な練習」。この言葉に少し救われた気がした。

3歩進んで2歩下がる、と誰かの歌で聞いたような2カ月。自ら無謀な挑戦をし、練習より療養の方が長いなんて、あきれを通り越して笑い話だ、と自分でも思った。