私も走る師走

二度目の療養を終えると、季節はすっかり冬になっていた。ランナーに最高の季節の秋はあっという間に過ぎていった。
寒いのは苦手だが、ようやく練習できる喜びでいっぱいだった。練習用に防寒具を揃えた。夫は『全然練習できてないのに、道具ばっかりそろうね』と笑った。

本当に時間がなくなってきたので、もう故障はできない。調整しながら、少しずつ練習した。
しばらくし、また10kmを走ると、以前のタイムより、10分も短縮することができた。テンションがあがる。これでようやく、初心者ランナーを名乗ることができそうだ。

熊本城マラソンが近づいてきたからか、ランナーをよく見かけるようになった。みな、この寒空の下でも、気持ちよさそうに汗を流している。私は体力がないのに加え、新陳代謝もよくないのか汗があまり出ない。周りのランナーが、タオルでしっかり汗を拭っているのを横目に、私はハンカチ王子よろしく、ポケットに忍ばせた小さいタオルハンカチで、額の汗を押さえていた。

そんな師走の日々。私も例外なく忙しかった。PTAの行事や、娘のイベント、そして数カ月休職していた仕事の再開など、慌ただしく毎日が過ぎていく中で、時間を見つけて走る。大変だけど、とても充実感があった。だからなのか、ある日一瞬、初めてランニングを“楽しい”と思った。
でもやっぱりきついし、嫌いだ。なんでこんなに頑張ってるんだろうと、泣きそうになりながら走る日々は変わらなかった。

10歳の娘も毎年、授業で持久走がある。親に似て、走るのが苦手だ。毎回、後ろから数人しかいない順位で走っている。それでも本人なりに頑張って走っていて、“きのうより何秒早かった”とか“前より順位が上がった”などと、報告してくれる。娘よ、今年は分かってあげられるよ、その嬉しさを。
娘が持って帰ってきた記録表をみて、がく然とした。2kmのタイムが私より早かった。
ショックを受けている私に、夫は『娘と張り合わん。ライバルは自分でしょ!』と一喝し、娘は『ママ、私より遅いんだ』と得意そうだった。