力を出し切った42.195km

夢にまでみたFINISHゲートをくぐる。
私は、42.195kmを走りきった。

ゴールの先には、夫と娘の姿があった。張り詰めた何かが壊れ、「きつかった~」と泣きついた。二人はこの上ないほどの笑顔で私を迎え、私以上に喜んでくれた。

きつかった。とにかく、きつかった。
25km地点までは、ほぼ歩くことなく同じペースで気持ちよく走れた。心配していた各関門も、余裕を持って通過した。
しかし、ここからの5㎞がつらかった。アクアドームから、新港の方へ向かい折り返し点を過ぎる。誰もが口を揃えてつらかったという5kmは、本当につらかった。長い広い直線道路。走っても走っても折り返し地点に行き着かない。心理的なつらさと、足の疲労もあいまって、とうとう歩いてしまった。周りもほとんどの人が歩いていたように記憶する。何度も”リタイア”の文字が頭をかすめた。もう終わりたい、もう走りたくない。ようやく折り返し、またひたすら続く直線道路と戦う。すると反対車線に、最終グループと収容バスの姿が見えた。

涙が溢れてくる。リタイアしたいほどつらい。でもリタイアしてたまるか。あのバスには絶対乗りたくない。絶対完走するんだ。私は、意地だけで走った。重い足を、意地だけで前に出す。弾まない体を、意地だけでなんとか走らせる。
長かった直線道路も終わり、やっと30km地点が見えた。すると少し体が軽くなった。あと12kmでゴールなのだ。

私が熊本城マラソンに挑戦すると言ったときに「なにを血迷ってんの」と毒を吐いた友人が沿道にいた。彼女は私を見つけ、喜んでくれた。彼女が撮ってくれた写真の私は笑顔だった。

残り約4kmの関門も無事通過し完走を確信したが、足はますます進まない。本当につらい。それでも何とか、熊本城を目指した。

号砲から6時間17分。スタート地点から6時間07分。
私の挑戦は終わった。

制限時間(7時間)ギリギリでの完走を目指していた私にとって、本当に立派なタイムだ。
私が6時間も、42.195kmも走ったなんて、とても信じられないが、首にかかる完走メダルのずっしりとした重さが、それを現実だと実感させてくれる。

喜び、安堵(ど)し、私の体をいたわってくれる夫。「ママすごいじゃん」とメダルをかけ、はしゃぐ娘。「のりちゃんがんばったね。偉い偉い、おりこうさん」と、40歳の娘の頭をなでる母。そして、父はどこか誇らしげだった。

『フルマラソン完走』という、誰でもチャレンジできるのに、ほとんどの人が一生経験しないような偉大なことを、私は家族に支えられ、達成できた。

そして、沿道の26万5000人もの人から応援してもらうなんて、普通に生活していたらありえないようなことも経験できた。

40歳にして初めて、自分史上初めて、自信を持って言える。
頑張った!
とにかく頑張った。
自分の出せる力を100パーセント出し切った。
私の無謀な挑戦は、完走という立派な結果で幕をとじることができた。

”熊本城マラソン”は、とにかく楽しかった。
本当に素敵な大会だった。
欲も出て、来年もぜひ出場したいと思う。

ただやっぱり、走ることはきついし、嫌いだ。

(完)