大切な人の旅立ち

「末期がんの自分の姿を映像に残してほしい」と友人から依頼されたのが、今から3年前のこと。私より10歳年上で、好きなものが似ている私たちは、偶然同じ服を着ることも多く、よく一緒に笑っていました。彼女のがんが分かった年の夏に母を亡くしていた私は、「また、大切なものが奪われてしまう」と不安に駆られました。さらに、つらい治療をする姿をカメラに収めるなんて私にできるのだろうかと悩みました。

でも、「ありのままの姿を残したい」と言われて以来、入院するときも、治療をするときも、検査の結果を聞くときも映像に収めました。明るく、笑顔が絶えない彼女を撮っているうちに、私は「末期がんって嘘じゃないか」という気持ちにさえなりました。

そして、今年の秋。「体力がなくなってきた」という彼女に会いに病院へ。彼女はカメラの前に座り、いつもの調子で穏やかに、職場の仲間たちや友人たち、そして家族への想いを話した後、こう言いました。

「ありのままを撮ってほしい」と言われ、彼女の姿を映像に残しました

「痛みの中にあっても、幸せはある。例えばね、朝、今日も起きられたなぁとか、今日は少し食べられたなぁとか。特別なことじゃないのよ。苦しみや悲しみにちゃんと向き合ったからこそ、自分の内面が見えてきて、少しの幸せに感謝できる。肉体的には厳しくても、幸せは育むことができるし、今、私はとても幸せ」

先日、彼女はそんな言葉を残して旅立ちました。大切な彼女を失った悲しみは深いですが、それ以上に彼女のそばにいられた幸せを今、感じています。


Profile
村上美香

1971年、熊本市生まれ。第一高、熊本大文学部卒。94年に熊本県民テレビ(KKT)にアナウンサーとして入社。夕方の人気番組「テレビタミン」を21年間担当し、「みかちゃん」の愛称で親しまれた。2018年春、同番組を引き継ぎ、KKTも退社。「ヒトコト社」代表。ホームページはhttps://hitokotosha.com