「探し物」の緊迫感

恥ずかしながら、忘れっぽい性格の私。外出先で車の鍵をどこに入れたか忘れ、バッグを全部ひっくり返すなんてことはしょっちゅうです。でももし、それが単なる物忘れではなく、認知症だとしたら…?

今や日本の要介護原因の1位となった「認知症」。日本では65%の人が一生のうちに認知症にかかるともいわれています。そこで今、私は介護職の皆さんに交じって、認知症の予防やケア、コミュニケーションを理学療法士の川畑智さんから学んでいます。

先日、その認知症の学びの会で、参加者の方からこんな話をうかがいました。「最近、母が探し物ばかりしている。一度探し物を始めると夜中の2時ごろまで続き、『明日探そう』と言っても全く聞いてくれない」とのこと。川畑さんによると、「認知症の人と、そうでない非認知症の人の間では、探し物に対する世界観が全く違う」そうです。

理学療法士の川畑智さん(右)と

例えば非認知症(認知症ではない)の場合、ある部屋を探して見つからなければ「明日は別の部屋を探そう」となりますよね。つまり翌日は「探さなくてよい場所」が分かる。一方、認知症の人は昨日探したということ自体を忘れてしまうから、「今のうちに見つけておかないと、明日はまたゼロから探さないといけない」という緊迫感があるそうです。「明日探せばいいじゃない」と、つい軽く言ってしまいたくなりますが、それでは不安は解消できません。記憶が苦手になった相手の気持ちにどう寄り添うのか、考えさせられました。


Profile
村上美香

1971年、熊本市生まれ。第一高、熊本大文学部卒。94年に熊本県民テレビ(KKT)にアナウンサーとして入社。夕方の人気番組「テレビタミン」を21年間担当し、「みかちゃん」の愛称で親しまれた。2018年春、同番組を引き継ぎ、KKTも退社。「ヒトコト社」代表。ホームページはhttps://hitokotosha.com