父と話せば
耳が遠い父との会話は、なかなか大変。話しかけても「は?聞こえん ! 」との返答。電話だとさらに伝わらず途中で切られてしまう始末。私にもアナウンサーという意地があり、大きな声で話してみたり、滑舌に気を付けたりしてみましたがうまくいかず、心が萎えてしまいました。
しかし先日、ある年配の男性から補聴器をつけた体験談をうかがいました。「補聴器をつけている時は、高い声や大声で話されると騒音に聞こえてしまい、何を言っているのか分からず苦労します」。大声=騒音。これには驚きました。これまで私は父に「どう話したら聞こえやすい?」と尋ねることもせず、勝手に「耳が遠いなら大きな声で話せば良い」と思い込んでいたのです。
私の話し方に気を付けることで、父と和やかに食事できました
また、高齢者のケアの専門家である理学療法士の川畑智さんによると、難聴の方の聞こえ方を考えるときに有効なのは、私たちにとっての「英語リスニング」を想定してみること。日本人がなぜ、英語のリスニングが苦手かというと(1)単語がわからない(2)早すぎて分からない(3)一度に言われる量が多すぎて分からないー。これを日本語に置き換えて考えると、難聴の方へのより良い接し方が想像できます。口の動きが見える位置で話すことも大事だそうです。そこで父と食事をする時、低めの声で、ゆっくり、短い文章にして話してみると、驚くほどすんなり通じたのです ! 大声で叫ばなくても伝わって、和やかに食事を楽しむことができました。
Profile
村上美香
1971年、熊本市生まれ。第一高、熊本大文学部卒。94年に熊本県民テレビ(KKT)にアナウンサーとして入社。夕方の人気番組「テレビタミン」を21年間担当し、「みかちゃん」の愛称で親しまれた。2018年春、同番組を引き継ぎ、KKTも退社。「ヒトコト社」代表。ホームページはhttps://hitokotosha.com。
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