【573号】すぱいすフォーカス – 悪(あ)しく、妖しい、愛(いと)おしいー くまもとの鬼伝説

漫画「鬼滅の刃(きめつのやいば)」のブームにより、全国各地の鬼伝説に注目が集まっています。 県内にも、鬼にまつわるさまざまな民話や伝説が存在。 熊本市南区の雁回山(がんかいざん)(314m)一帯に伝わる話を中心に、 各地の鬼伝説を紹介します。

※掲載した民話・伝説には諸説あります


多くの鬼がいた!? 雁回山一帯

南区城南町・富合町から宇土市にまたがる雁回山は、もともとは木原山(きはらやま)と呼ばれ、平安時代に居城を構えたとされる源為朝や、鬼にまつわる伝説が数多く残っています。ちなみに雁回山の名は、弓の名手だった為朝が射る弓を恐れ、雁が山を避けて通るようになった伝説に由来しているそうです。

今回、富合町在住の郷土史研究家・山本保陳さんに、地元に伝わる鬼伝説を紹介してもらいながら、雁回山山上にある幻の巨石群「鬼の岩屋(いわや)」を目指しました。

「その昔、木原山の鬼と宇土市の白山(はくさん)に暮らす鬼は仲が悪くけんかばかりしていた。互いに岩を投げ合った跡が、富合町と宇土市の境界線付近に点在する巨石と伝えられます」と山本さん。最後は木原山の鬼が負け、富合町の釈迦堂や城南町赤見、御幸木部町に逃げ、最後は大分県別府市にすみ着いたといいます。

また城南町陳内には、「村娘をさらいに来る悪い鬼たちに、源為朝が『あすの朝までに100個ため池を造れば許す』と言い、鶏の止まり木に夜中に細工をして鳴かせ、朝になったと鬼を勘違いさせて村を救った」という伝説も。

巨石が並ぶ「鬼の岩屋」。幾つもの岩は鬼が重ねたとも、為朝が兵糧や武器を隠した場所とも…。また南区野田の大慈禅寺から昔この岩が見え、時計代わりにされていたとも伝わります

山本さんの話を聞きながら雁回山の遊歩道を歩き、第一展望所前から山に分け入りしばらく進むと、幾つもの巨大な石が重なった「鬼の岩屋」が見えました。岩屋と鬼の関係は不明ですが、同所では山岳信仰も盛んだったそうで、山本さんは「人知を超えた自然の姿に、昔の人は鬼を想像したのでは」と言います。雄大な自然が人々の想像を膨らませ、鬼となって語り継がれているのかもしれません。

お話を聞いた

郷土史研究家
山本 保陳(やすのぶ)さん

取材協力

お問い合わせ

富合まちづくりセンター

TEL
096-357-4580

[壱]「木原山の九十九谷(くじゅうくたに)」のお話

為朝にだまされた鬼

ある日、源為朝がよく働く家来の鬼に褒美は何がよいかと聞いたところ、「人を食べたことがないので、一度食べてみたい」と嘆願されました。為朝は驚きましたが引っ込みがつかず、「一夜にして百の谷を掘ったらかなえてやろう」と、願いを聞くことに。喜んだ鬼は、見る見るうちに九十九の谷を掘り、残りはあと1つ。慌てた源為朝は、バッチョ笠で鶏の羽ばたく音を出し、「コケコッコー」と鳴き声をまねしました。

この鳴き声を聞いて朝が来たと勘違いした鬼は谷を掘るのをやめ、褒美を諦めて人知れず姿を消したそうです。


その他の鬼伝説


[弐]天草市 鬼の城公園

鬼伝説

天草市五和町の「鬼の城公園」付近に残る伝説。昔々、この地の鬼は人々と仲良く暮らしていましたが、山には恐ろしい大蛇がすみ、村人や家畜を襲い困らせていました。ある時、この地にお坊さんが立ち寄り、鬼たちと協力して大蛇を退治することができたそうです。

所/天草市五和町御領
取材協力/同市五和支所まちづくり推進課 TEL:0969-32-1111


[参]水俣市

鬼の歯形石

水俣市の新地山にすむ鬼の一族が、家族が増えて窮屈になったので増築を峠の地蔵さまにお願いしましたが、悪さをする鬼が増えると困るので、「あすの一番鷄が鳴くまでに造ること」と条件を出されました。鬼は一生懸命作業しましたが間に合わず、腹立ちまぎれに近くの岩にかみ付いた跡が「鬼の歯形石」になったと伝わります。

所/水俣市江添侍 
取材協力/同市市長公室秘書広報係 TEL:0966-61-1655


[肆]阿蘇郡産山村

巫女(みこ)と鬼っ子

産山村に住む巫女は遊び相手がおらず、一人で寂しく過ごしていました。それを知った久住山に住む子鬼は、親鬼に相談して節分の日暮れまでの約束で遊びに行くことを許されました。巫女と子鬼はすぐに仲良くなり毎日楽しく遊びましたが、節分の日が来ると、子鬼は泣く泣く山へ帰ってしまったそうです。

所/阿蘇郡産山村産山
取材協力/同村企画振興課 TEL:0967-25-2211


[伍]上益城郡山都町

鬼の巡り石

歴史街道「日向往還」沿いにあり、高さ3m、幅2mの巨石が台石の上にのっていましたが、熊本地震により落下しました。大みそかの夜になると鬼がやって来て、この石をぐるりと回すと伝えられてきました。パワースポットとしても知られ、台石に小石を投げ、石がのると恋がかなうといわれます。

所/上益城郡山都町長谷
取材協力/同町山の都創造課 TEL:0967-72-1158