【374号】おいしいコーヒーとぬくもりの空間 街と純喫茶
レトロチックな店構えと、おなじみのメニューに心落ち着く純喫茶。数は少なくなってきましたが、昭和の頃のままの姿でひっそり営業を続けていたり、新しいスタイルの店がオープンしたり。再開発で街の風景が変わっていっても、純喫茶があるとホッとなごみます。
昭和43年、通町筋側から見た上通
昭和30年ごろの新市街入り口
”純喫茶”のおもてなしが再注目
熊本の街にアーケードが生まれる前から、人々の憩いの場となっていた“純喫茶”。コーヒーの味にこだわる店、絵画や音楽など趣味に浸れる店など個性ある店が次々にオープンし、純喫茶は街のカルチャーを作る大きな要素に。また、待ち合わせ場所の定番にもなりました。「私が高校生の頃は、喫茶店に行く=大人の仲間入り。マスターと話をしながら、一杯ずつ丁寧に入れたコーヒーを楽しんでいました」と一美洋二郎さん。しかしオイルショック以降、店の数は減少し、全国展開のコーヒーショップが主流に。「今また、再びコーヒーブームが到来し、ハンドドリップで入れる専門店も誕生しています。古きよき純喫茶のおもてなしに近いですね」。カタチを変えても純喫茶は、今も街に欠かせない存在のようですね。
純喫茶とは
純喫茶は、コーヒーの輸入が再開された1950(昭和25)年以降に登場した。食品衛生法によると、食事やアルコールを提供しない店を指す。コーヒーや紅茶などドリンク類のほか、トースト、サンドイッチなどの軽食が主なメニュー。
『まる味屋珈琲店』代表 一美(いちみ) 洋次郎(ようじろう)さん 昭和25年に熊本市の新市街で創業した『まる味屋珈琲店』2代目。焙煎した豆を飲食店に提供しつつ、街なかの喫茶店を見守ってきた
1950年 コーヒー卸しの『まる味屋珈琲店』新市街で創業
1950年代後半 全国でジャズ喫茶・名曲喫茶が流行
1955年 新市街入口に熊本初の純喫茶「オリンピック」がオープン、以降、ぶらうん、ミミ、アロー、ビギンなどが次々オープン
1960年 初代上通アーケード完成
1960年代後半 純喫茶ブーム
1969年 熊本交通センターオープン 初代下通アーケードオープン
1973・1979年 オイルショック
1979年 サンロード新市街アーケード完成
1980年代 フードメニューが充実するなど喫茶店の業態が変化
1990年代 コーヒーショップがブームに
昔ながらの名店も、味にこだわる新店も 行きつけにしたい街ぶら"純喫茶"
一口に純喫茶と言っても店のカタチはさまざま。昭和レトロがたまらない店構え、店主自ら焙煎した豆、音楽のセレクト…。お店を巡って自分のツボにはまる店を探すのも楽しみです。街なかを歩きながら、そんな一軒を見つけてみては。
好きなものを詰め込んだ"文化系"の店
1963年〜 画廊喫茶 ぶらうん
普段は店のコレクションを展示
ママとの会話にいやされる
老舗の画廊喫茶として県内外に知られる『ぶらうん』。「マスターの趣味が詰まった店」とママの北川美津子さんが話すように、絵画や音楽、山登りなどが好きな人が集う店に。親子三代で訪れる常連客も多く、ママとのおしゃべりを楽しんでいます。
オープン当時のマスターとママの仲睦まじい写真
名物“アイスコーヒー”450円。シャーベット状でほんのり甘いのが特徴です
「ご存知 うまい!コーヒー」の文句に引かれて入店する観光客も多いとか
1978年〜 Jazz Inns おくら
オープンから39年、変わらないランプの明かりがともる空間
コーヒーとジャズの楽しさをガイド
大学時代からジャズとコーヒーを愛しているというマスターの小倉達弘さん。卒業と同時に開いた『おくら』では、ジャズの名盤を聴きながら“おくらブレンド”を味わうのが定番。ジャズミュージシャンにも愛され、ほぼ毎週ライブが開かれています。
普段はギターものをかけているというマスターのベスト3枚
マスターはシティエフエム『しろひのBaby Talk Jazz Study』に出演中
学生時代からのお気に入りの豆を使った“おくらブレンド”500円
2008年〜 denkikan cafe(珈琲しもやま)
映画と一緒に楽しむコーヒーの香り
映画館内にあるコーヒー専門店。作品を見ながら飲むことを考えて、入れたてはもちろん、冷めてもおいしく飲めるのがココのこだわりに。上映作品は必ずチェックするオーナーの下山裕さんと、映画談義を交わすのも楽しみの一つになっています。
上映作品のイメージでブレンドした期間限定コーヒーも登場。豆の販売もOK
自家焙煎の豆を使ったコーヒー500円。アロマ、ビター、カフェインレス、アイスから選べます
昭和42年、ミニスカートブーム
昭和36年、下通商店街
生豆と焙煎にこだわる"コーヒーマニア"の店
1950年〜 岡田珈琲 サテライト店
店内は昭和40年代と変わらない雰囲気
2017年「ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ」で優勝した店長の久保田洋平さんがドリップを担当
街の歴史と歩んできた名店
オープンから67年以上、熊本の喫茶店文化をけん引してきた『岡田珈琲』。コクのある“岡田ブレンド”は、自家焙煎を始めた昭和40年から続く定番の味。ひき立ての豆をハンドドリップで入れるほろ苦の味は、昔も今も変わらないおいしさです。
生クリームを落とすのがおすすめ“岡田ブレンド”500円
1950年〜 まる味屋珈琲店本店
焙煎のいい香りに包まれる
5月9日にワシントン通りから移転した『まる味屋珈琲本店』。60種類の自家焙煎豆から、一人一人の味覚に合ったブレンドを“処方”してくれるのが魅力。カフェスペースでは、“ダッチアイス黒ビール風”などオリジナルメニューも味わえます。
『まる味屋』の味を作る1971年ドイツ製の焙煎機
水出しコーヒーをシェイカーで仕上げた“ダッチアイス黒ビール風”470円。濃厚でマイルドな夏おすすめの1杯です
2013年〜 AND COFFEE ROASTERS
「熊本に新しいコーヒー文化を根付かせたい」と、東京から移住した山根さん
甘く優しいクリアなコーヒー
「焙煎や入れ方には、おいしくなるセオリーがあります」と代表の山根洋輔さん。スペシャルティーコーヒーと浅煎りにこだわり、豆本来の味と香りを楽しむ1杯を提供しています。店内で味わうほか、テークアウトで街ブラしながら飲むのも◎
夏のおすすめは、じっくり時間をかけて抽出した水出しコーヒー“COLD BREW”500円
待ち合わせや息抜きに"とまり木系"の店
1975年〜 喫茶中川
24時間いつでもくつろげる
昭和50年のオープンから、2年後に24時間営業になった『喫茶中川』。時間帯で客層は変わるものの、世代を超えた“マチの居場所”になっています。13時までオーダーできる“モーニングサービス”や多彩なランチなど、食事メニューも人気。
朝の時間帯を担当するマスターの中川正人さん。「いってらっしゃい」の声掛けで、1日元気に過ごせそうです
山盛りサラダがうれしい“モーニングセット”570円
1974年〜 喫茶院(カフェイン)
アイアンレースのドアやレンガの壁や木製ベンチなど、開店時から変わらない店内
飾らない雰囲気が心地いい
昔ながらの雑居ビルに店を構える『珈琲院』。昭和49年のオープンから変わらない雰囲気と、サイフォンで入れるコーヒーが人気です。「ひっそりしている方がいい」と笑うマスターの飾らない接客が、居心地のいい空気感を生み出しています。
ブレンドコーヒー450円
若い頃は三浦友和似(!)のマスターの今村光彰さん
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