【441号】熊本地震から2年半 城下町「新町・古町」の今
加藤清正が築城の際に造った城下町「新町・古町」。往時の面影を今に伝えてきましたが、熊本地震によって甚大な被害を受け、多くの町屋が解体。空き地が増え、町の景観も大きく変わりました。一方で、傷ついたこの町を選び、新たに出店、拠点を構える人たちが増えています。熊本地震から間もなく2年半、生まれ変わる城下町へ出かけてみませんか。
町屋を再生した「ゲストハウス426」には、多くの外国人観光客が訪れています。この日のゲストは韓国から
思いは郷土愛 復活、再生、新たな息吹も
熊本地震後、新町・古町エリアに誕生、再生したお店や施設を紹介します。「熊本の顔である熊本城とその城下町を元気にしたい」。共通する思いは郷土愛でした。
町屋を生かした店舗が立ち並ぶ古町界隈
昔ながらの風情を残す新町・新鳥町商店街
江戸時代の建物がゲストハウスに わが家のような旅の拠点
西南戦争の戦火を免れ、現代に残る希少な江戸時代の建物が、ゲストハウスに。町屋が取り壊される中、早川祐三さん・明子さん夫妻が管理を引き受け、古町にあった洋館の建具を使用するなど、町並みの名残も感じるようにセルフリノベーションしたそうです。わが家のような雰囲気なので、暮らすように旅することができると好評です。
1階はリビング、2階はベッドルーム。1棟貸し切りタイプ
ベッドルームの奥には和室が。布団を敷けば5人まで泊まれます
店舗情報
- 住所
- 熊本市中央区細工町4-26
- TEL
- 090-9403-2476
- 営業時間
- チェックイン15:00(最終21:00)チェックアウト11:00 ※予約受付時間9:00〜17:00
- 休業日
- 不定
- 料金
- 1棟1万円(2名まで)、追加1人当たり2500円(上限5名まで)
- 駐車場
- 1台(高さ制限あり)
大人の遊び場、縁側… ニーズに合わせて変化するラボ
管理栄養士の相藤春陽(あいとう・はるひ)さんは、「文化があり、下町の雰囲気が好き」と唐人町で「春陽食堂」を営んでいましたが、今年4月に新町で「食の実験室」として「HARU lab.」を開きました。料理教室や商品開発に加え、レンタルスペースとしても利用できます。家族でパーティーをしたり、ワークショップをしたり、「やってみたい」と思ったら、まずは相談してみて。
シェフが集まってパーティーをしたり、人気シェフの料理教室があったり、さまざまな大人たちが活用しています
季節の花を楽しむワークショップも。その他、食に関係がなくてもOKです
料理教室は「簡単」なのがうれしいポイント。男性だらけの会も
店舗情報
- 住所
- 熊本市中央区新町4-1-18 新町コーボニュータウン502
- TEL
- 090-8761-3395
- 店舗ホームページ
- https://www.wellsole.jp/2018/04/12/post-793/
- 営業時間
- 完全予約制。時間は応相談
- 休業日
- 不定
- 駐車場
- なし
「周りの人のおかげ」感謝の気持ちで再出発
熊本地震で全壊判定を受け、今年1月に再建した創業113年の老舗菓子店。3代目の岩原和哉さんは、「再建のめどが立たない方も多い中、手放しでは喜べませんが、地域の菓子屋としてお菓子を作り続けたい」と話します。新店舗には、旧店舗の面影を感じるよう、梁(はり)などの部材を活用。以前と変わらず、夏目漱石や地名にちなんだ和菓子が並びます。
ズシンと重い“城下町どらやき”184円。町巡りのお供におすすめ
「平成の町屋として残していきたい」とご主人
店舗情報
- 住所
- 熊本市中央区新町4-1-39
- TEL
- 096-352-7638
- 店舗ホームページ
- http://www.okashino-shiboriya.com/
- 営業時間
- 10:00〜18:30(土曜・祝日は〜16:00)
- 休業日
- 日曜
- 駐車場
- 3台
築150年の町屋が新たな地域の憩いの場に
長年の夢をかなえ、貴照梨左(きしょう・りさ)さんが昨年2月に大正ロマン食堂をオープン。地震をきっかけに「助け合う」ことの大切さに気付き、地域のシェルター的な存在にしていきたいという願いを込めたそうです。地元の青果店や精肉店などで食材を仕入れ、できるだけリーズナブルな価格で手作り料理を提供。子どもやお年寄りが集う場所になっています。
レンコンが入ってふわふわに仕上がったハンバーグが絶品な“ハンバーグハヤシ”918円
店舗情報
- 住所
- 熊本市中央区新町2-4-22-1
- TEL
- 096-200-7100
- 店舗ホームページ
- https://ameblo.jp/kisyou-risa/theme-10029062844.html
- 営業時間
- 11:30~21:00(オーダーストップ〜20:30)
- 休業日
- 日曜・祝日
- 席
- 33席
- 駐車場
- なし
城下町の今、そしてこれからのこと
interview
くまもと新町古町復興プロジェクト事務局長 吉野 徹朗さん
熊本地震によって多くの町屋が損壊。地域で守ってきた伝統的な景観をできる限り残していきたいと、地震直後に地元有志を中心に立ち上がったのが「くまもと新町古町復興プロジェクト」です。当初は、がれきの撤去や家財道具の運搬などに率先して汗を流し、町屋の所有者に寄り添いながら活動を続けていました。しかし、熊本地震から2年半がたち、プロジェクトのあり方も変化の時を迎えていると話します。「300軒以上あった町屋も、現在は200軒弱となりました。残すためには大きな費用もかかるため、これ以上、所有者に負担はかけられません。これからは熊本地震を体験したからこそ気づいた地域の絆や人の魅力、観光資源を発信していくことが大切だと考えています」
その一環として行っているのが「熊本新町古町復興音楽会」。今年は、高木ブーさんやキヨシ小林さんなど、ウクレレミュージシャンをゲストに迎え、築140年以上という早川倉庫を舞台に開催されます。「音楽会を通じて多くの方に新町・古町のことを知っていただき、足を運んでもらうきっかけになればうれしい。そして地域の方には、音楽を聴いて笑顔になってほしい」と吉野さん。
時間の経過とともに変化するニーズに応えながら、「地震前よりも、より良い町に」という信念は忘れず、これからも地域とともに前を向いて進んでいきます。
熊本新町古町復興音楽会
日時:10月27日(土) 開演 15:00(開場 14:30)
会場:早川倉庫(熊本市中央区万町2-4)
料金:前売り3500円(当日4000円)
クリエーターも増殖中!? 新町・古町が選ばれる理由
新町歴10ヶ月
Hub.craft 山下 ふひとさん(映像ディレクター)
市街地からも徒歩圏。さらに電停も近いので、打ち合わせなどに利便性が良いと好評です。徹夜明けでも、ベランダから見える朝日と熊本城に元気をもらっています。
古町歴11ヶ月
もりのともしび 片島 雄一さん 荷風さん(デザイナー)
川のせせらぎ、風の匂い…自然を感じつつ、時が止まったような空間で、仕事に集中できるのが良いですね。ご近所さんが温かいのもこの町ならではの魅力だと感じています。
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