【464号】人間関係をスムーズに 使える心理学テクニック

もうすぐ新年度が始まります。職場や学校で新たな人との出会いが増えるこの季節、ワクワクすると同時にうまくやれるか不安にもなりますよね。そこで、人間関係を円滑にする、日常生活で使える心理学のテクニックをご紹介します。

シーン別 心理学の実践ステップ

職場や学校、地域や家庭など、さまざまなシーンで人付き合いがうまくいく方法を、専門家に聞きました。

"慈愛・無批判・気づき"が基本

日常生活の中で心理学のスキルを上手に使うことにより、自分の心をコントロールし、豊かな気持ちで楽しく過ごすことができるようになります。そのためには、心理学で大切な“慈愛・無批判・気づき”の三本柱を基本に、人とコミュニケーションを取るよう心掛けることが大切です。

お話を伺ったのは…

ヒューマンアカデミー熊本校 心理学講座講師
坂本 知華子さん

メンタルコーチ・心理セラピストとして、カウンセリングや企業研修、各種講座を開催。その他、自身が主宰する「Chikako工房」で創作ワークショップも手掛けている。


職場編

部下に好かれる上司になる

信頼を得る3ステップ

(1)同調 報告や相談を受けたらまず、部下をよく観察して相手のペースに合わせます(相手がゆっくり話していれば、自分もゆっくり話すなど)。
(2)導く 話を聞いた後に、「なるほど。それは資料作成に時間が必要ですね。例えば、今日から1時間でも集中して頑張ることはできそうかな?」といった具合に、リードしましょう。
(3)ねぎらいの言葉 最後には「いつも頑張ってくれてありがとう」といったねぎらいの言葉を忘れずに。

ポイント

「同調」の際は、表情、声色、姿勢、話す速さ、ジェスチャーなど、相手の言葉以外の部分(非言語)をよく観察して。「導く」では承認をした後に「そして」「例えば」などの接続語を活用すると効果的。


上司のハートをわしづかみに!

忘れちゃいけない2ステップ

(1)お礼 まずは、「○○部長、ありがとうございます」とお礼を述べます。
(2)承認の言葉 続けて「〇〇部長のアドバイスのおかげで、契約できました」など、具体的に感謝を伝えましょう。

人は自分の行為が認められると、さらに役に立ちたいと思うもの。また、上司の指示に「でも」はNG。一度はイエス(無批判)と受けた上で、自分の意見を言いましょう。「でも」を「そして」に変えるだけでも印象が良くなりますよ。

ポイント

「〇〇部長」など名前+役職名で呼ぶと、相手の存在自体を承認することになり、充足感を与えることができます。


第一印象編

初対面での好感度をアップ!

事前に準備したい2ステップ

事前の準備で、職場や公園デビューなど、初対面の人との会話をスムーズに。
(1)話が弾む様子をイメージしつつ、気分が上がるよう自分なりのポーズをする(こぶしを握る、胸に手を当てる、など)。
(2)「イエス・セット+自分の伝えたいこと」を準備しておく。「いい天気ですね」「だいぶ暖かくなりましたね」「日曜は町内会ですね」など、確実にイエスがもらえる3つの質問(イエス・セット)をした後で「よければ町内会に一緒に行きませんか」など自分が伝えたいことを話します。人は何度も同意していると、相手を受け入れやすくなるものです。

ポイント

イエス・セットはリズミカルに明るく。周りの人と声のトーンや間を合わせると、場になじみやすくなりますよ。


会話の際 動作で分かる相手のホンネ

何げないしぐさに、その人の心理が表れていることがあります。相手の動作から見える“ホンネ”を探してみましょう。

視線が右上、右横に行く

未来を見据えている。うそをついていることも? ※左利きの人は視線が左上、左横の場合

視線が左上、左横に行く

過去に体験したことを振り返っている。※左利きの人は視線が右上、右横の場合

腕を組む

警戒心の表れ。自分を落ち着かせるためにしている場合も。

身を乗り出す

相手の話を受け入れている、興味を持っている。

身を引く

否定の表れ、不信感、嫌悪感などを抱いている。

首を横にかしげる

否定の表れ。言葉でイエスと言っていても本心は否定的な可能性も。

※上記はあくまで参考例です。相手の心理を決め付けず、肯定的な意図を感じ取ることも大切です


夫婦編

あの頃のトキメキを取り戻す

トキメキはずかし3ステップ

(1)お礼やあいさつ 「ありがとう」や「行ってきます」といったあいさつは必須です。
(2)承認の言葉 そこに「あなたがいるからいつも頑張れる」といった、相手を承認する言葉を添えましょう。
(3)スキンシップ できれば、相手の目を見て肩に触れるなど、スキンシップを図りましょう。仲の良さがうかがえるスキンシップは、それを見ている子どもにも、安心感や自己肯定感を与えます。

ポイント

ボディータッチが難しい場合は、目を合わせることからチャンレジして。また、相手の名前を呼ぶことで、承認がワンランクアップします。


子育て編

子どものやるきを引き出す

できるイメージを作る3ステップ

(1)過去にできたこと 「〇〇ちゃん、毎日練習して自転車に乗れるようになったよね」
(2)次のチャレンジで成功するために必要なことは何か 「今度は△△ができるようになるためには何をすればいいと思う?」
(3)励まし&できるポーズ 「△△ができるように応援しているよ。ママと“できる”ポーズを決めようか」といった具合に、こぶしを握るなど“できる”イメージが湧くようなポーズを一緒に行いましょう。

単に「頑張ろう」と言うだけでなく、何をしたらいいのか、子ども自身が気づくようにアプローチすることが大切。

ポイント

表情や声のトーンを明るくしたり、ジェスチャーを大きくしたりすると、子どもの気持ちが高揚しますよ。さらに、子どもの「利き五感」に合わせた言葉掛けが◎。


相手の「利き五感」を知って説得力アップ

手に利き手があるのと同様、五感にも優先的に使う感覚「利き五感」があります。その人の利き五感の見極め方と、感覚タイプ別(視覚、聴覚、触覚など身体感覚)に有効な話の伝え方を紹介します。

視覚優位タイプ

聴覚優位タイプ

身体感覚優位タイプ

※上記はあくまで参考例です。相手の心理を決め付けず、肯定的な意図を感じ取ることも大切です


自分を認めたときから生き方が変わります

以前は、自分の思考や行動にパターンや癖があることを意識しておらず、何か問題が起こると人のせいにすることも。子育てでも、自分の固定観念を押し付けたことが多々ありました。そんな私も、心理学に出合ったことで自分と向き合い、嫌だった自分を認めることができたときから、心に余裕ができ、生き方が大きく変わりました。自分を知り、心理学のテクニックを日常に取り入れることで、コミュニケーションの質が向上しますよ。

できることから少しずつ実践してみて


■ 取材協力/ヒューマンアカデミー熊本校