【486号】熱い風が吹く! マンガ大国・熊本の今

「ワンピース」の尾田栄一郎さんをはじめ、多数のマンガ家を輩出している熊本。 「描き手」以外にも、マンガ研究者や編集者、 著名なコレクターなどが多い「マンガ大国」として注目を集めています。 いま、熱い風が吹いているマンガ大国・熊本の最前線を特集します。

01 すべてはこの男の熱狂から始まった…

「橋本さん、熊本のマンガ界がいま熱いって本当ですか?」

伝説の古書店「キララ文庫」の元店主で、NPO法人熊本マンガミュージアムプロジェクト(以下クママン)の代表。
長年、熊本のマンガ界において“最重要人物”であり続ける橋本博さんを訪ねました。

いま熊本のマンガ界は、3つの大きな力が潮流となり、猛烈に熱い風が吹いています。まず、週刊少年ジャンプの黄金期に編集長を務めていた堀江信彦さん(「コアミックス」代表)が、マンガ家の登竜門としてオープンさせた「コアミックスまんがラボ」の盛り上がり。また「フラッグス」などが手掛けるワンピース像の設立など、モンスターマンガ「ONE PIECE」による一連の熊本復興プロジェクト。そしてマンガの力を最大限に活用し、マンガによる地域おこしを行う有志団体「クママン」の動きです。

私が主宰する「クママン」は、地域密着型施設である「合志マンガミュージアム」の設立を皮切りに、マンガを資料として記録・保存するアーカイブの設立のために、自治体と協力して県内各地にマンガ関連施設をつくったり、学問としてマンガを研究することを大学に呼び掛けたりしてきました。20万冊もの蔵書を持つクママンは、全国規模のマンガの拠点を熊本に置くことを目指します。また今後、次世代に残すべきマンガを見定める「マンガ遺産」の認定、「九州マンガ検定」の創設なども考えています。

橋本 博

NPO法人 熊本マンガミュージアムプロジェクト代表 合志マンガミュージアム館長 橋本 博(はしもと ひろし)さん

今年6月に熊本で初めて「日本マンガ学会」が開催され、熊本大学ではマンガを研究できる「現代文化資源学コース」が今年度から始動しています。「マンガなんて」と蔑(さげす)まれてきたマンガを“学問として研究する”時代がやってきたんです! その中で熊本は「マンガ王国」として、全国から一目置かれる存在となっていますよ。

合志マンガミュージアム 蔵

合志マンガミュージアム 蔵

主催=熊本国際漫画祭実行委員会

主催=熊本国際漫画祭実行委員会


02 マンガ×学問の新たな可能性をひもとく!

「鈴木先生、マンガを学問として研究するってどういうことですか?」

2019年4月に熊本大学文学部コミュニケーション情報学科に設置された「現代文化資源学コース」が、2020年度に本格始動!
その中でも研究の柱となる「マンガに関する研究」について、鈴木寛之准教授に話を伺いました。

これまでサブカルチャーの一つとしてしか評価されていなかったマンガですが、2006年に京都精華大学が設立したマンガ学部、08年に明治大学が設立した国際日本学部の登場により、全国的にも大学でマンガを研究する動きが広まってきました。県内ではすでに崇城大学、尚絅大学でマンガ関連講座が設置されていましたが、マンガ研究者の方々の積年の思いが実り、ついに今年、国立大学で初めて、マンガを研究するコースが熊本大学に誕生しました。これはマンガ文化の歴史において非常に画期的なことだと思っています。今は来年度からの本格始動に向けて準備を進めているところです。大学ではこれまでも国と連携してマンガの保存に取り組んできましたが、集めるだけではなく、「現代の文化資源」として新たな価値付けを行い、活用方法を考えていくことが大事だと思っています。

鈴木 寛之

熊本大学大学院 人文社会科学研究部(文学系) 鈴木 寛之(すずき ひろゆき )准教授


03 日本有数の少女雑誌コレクターが菊陽町に

村崎修三と少女雑誌の世界

少女雑誌とは?

明治末期から昭和期にかけて創刊されたもので、10代の女性をターゲットとするもの。少女の理想像を伝えるメディアとして機能し、代表的なものに「少女の友」「少女世界」「少女画報」など

菊陽町在住の少女雑誌コレクター・村崎修三さん。少女絵の画家を目指して、中学時代から少女雑誌の収集を始めました。特に昭和時代の少女雑誌コレクターの第一人者として、全国的にも知られています。「昔から熊本は貸本屋が多く、月遅れの雑誌を購入してコツコツと集めたものです」。1953年にテレビ放送が始まり、雑誌も「読むから観る」へ変化する潮流の中で、徐々にマンガの割合が増えていったとか。貴重なコレクションを見せていただくと、長谷川町子さんや手塚治虫さんの初期のマンガが掲載されているではありませんか…! ところが、1963年ごろには少女雑誌そのものがなくなり、「なかよし」「りぼん」「ちゃお」といった、現在のマンガ雑誌へと完全に移行。菊陽町図書館では、村崎さんが寄贈した1万冊余りの貴重な少女雑誌を読むことができます。

作者に直接頂いたという超貴重な原画も!

こちらは村崎さんの秘蔵コレクションの一部

こちらは村崎さんの秘蔵コレクションの一部


04 新しい<聖地巡礼>の旅

「今日どこさん行くと?」

花岡山、フードパル熊本、田原坂…。熊本を舞台に描かれる新感覚のドライブコメディー。
熊本県民にはおなじみの場所を「美人上司と部下がドライブする」お話が、各方面から注目度上昇中! マニュアル(MT)車で坂道を上ることに興奮を覚える上司(かみつかさ)さんのかわいい姿と、熊本弁がたまりません…。

熊本出身・熊本在住の作者 鹿子木灯(かなこぎ ともり)先生にインタビュー!

「熊本地震後、自分なりに地元の復興への手助けになればと思い、“熊本観光”をテーマにしたマンガを描こうと思いました。MTの愛車が大好きで、地元が大好きで、坂道が大好きな、私の趣味嗜好(しこう)がそのまま表れた作品です(笑)。読者の皆さんがツイッターに“♯今日D”と付けて、実際に行った場所を投稿しながら熊本を観光してくださっていて、本当にうれしいですね。上司さんと部下の戸部下(とべした)君の、ムズきゅんな今後の関係にも注目してほしいです(笑)」

坂道に快感を覚える上司さんに萌え…! (C)鹿子木灯

坂道に快感を覚える上司さんに萌え…! (C)鹿子木灯

「今日どこさんいくと?」(鹿子木灯)

『月刊コミックキューン』(毎月27日発売)で連載中!
&コミックス1〜2巻好評発売中!
 

(C)鹿子木灯

(C)鹿子木灯


05 アニメの舞台は芦北町らしい…!?

「放課後ていぼう日誌」

女子高生たちの青春釣り物語

九州地方の海辺の田舎町に越してきた鶴木陽渚(つるぎひな)が、海釣りを楽しむ謎の部活「ていぼう部」に入部させられ、釣りの面白さを知り、海の魅力を満喫するようになる姿がイキイキと描かれます。海釣りの基本や魚のさばき方など“使える知識”も盛りだくさんで、「女子高生×海釣り」というこれまでにない設定が面白い!

TVアニメ化も決定した注目の作品 美しい海の風景に癒やされる… (C)小坂泰之(秋田書店)2017

TVアニメ化も決定した注目の作品 美しい海の風景に癒やされる… (C)小坂泰之(秋田書店)2017

「放課後ていぼう日誌」(小坂泰之)

『ヤングチャンピオン烈』 (毎月第3火曜発売)で連載中!
&原作コミックス1〜4巻
好評発売中!

(C)小坂泰之(秋田書店)2017

(C)小坂泰之(秋田書店)2017


06 今年熊本で初開催!

日本マンガ学会 第19回大会に潜入

マンガを学問として研究する「日本マンガ学会」の第19回大会が、6月22日・23日の2日間、熊本大学で初開催。
350人を超える国内外の研究者が集まり、少女マンガや4コママンガ、戦争、歴史など25のテーマで研究発表が行われました。

「熊本という地方に『クママン』のような有志の組織があり、堅実に活動をされている点が面白いと思います。実際に行政と連携し、マンガの“集積地”としての価値を高めて、読み捨てされがちなマンガのアーカイブ活動に力を入れている点は非常に注目すべきところですね」

2日目のシンポジウムの様子(6月23日、熊本大学文法学部本館)

2日目のシンポジウムの様子(6月23日、熊本大学文法学部本館)

大会実行委員長
藤本由香里さん(熊本出身)

(マンガ研究者・明治大学国際日本学部教授)

藤本由香里


最後まで読んでいただいてありがとうございます。

今回のタイトルイラスト(タブロイド判くまにちすぱいす486号の表紙絵)はなんと、「今日どこさん行くと?」の作者、鹿子木灯先生の描き下ろしです!!

編集段階では、泣く泣くイラストの上にタイトル文字をのせました。
こちらが、文字無しのタイトルイラストです。(編集部)

(C)鹿子木灯

(C)鹿子木灯