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Mari(Kumarism)

紫熊祭公式パンフレットの制作経験を持つKumarismのデザイナー兼ライター。フォントを当てるのが得意です


大学祭パンフレットに込められた熱い想いに注目!

熊本大学には、黒髪キャンパスの「紫熊祭」、大江キャンパス(薬学部)の「蕃滋祭」、本荘・九品寺キャンパス(医学部)の「本九祭」、合わせて3つの大学祭があります。学生だけでなく地域の方々にも楽しんでもらうため、いつどこでどんな企画をするのかわかりやすく書いたパンフレットを実行委員の学生が制作しています。今回は医学生による「本九祭」と、紙面でもご紹介した「紫熊祭」の公式パンフレットに注目し、それぞれのパンフレット制作に込められた熱い想いをご紹介します。


大学祭の〝設計図〟医学部本九祭パンフレット

本九祭とは、医学生と地域の方々をつなぐことを第一の目的に熊本大学医学部で開かれている大学祭。大学が持つ研究所や、医学生が普段学んでいることを公開する「アカデミック企画」が特徴です。テーマ「Re:start(リスタート)」の意味どおり、実はこの本九祭は平成28年熊本地震の影響で二年前開催が断念されて以来、3年ぶりの開催。パンフレットの制作も担当した、第22回本九祭実行委員長の緒方啓仁さん(医学部医学科2年)に制作秘話を伺いました。

ー実行委員長なのにパンフレットの制作もされたんですか?

緒方 はい。デザイン担当の実行委員と2人で作成しました。

ーええ、2人だけ? 結構時間がかかったんじゃないですか?

緒方 信じられないとおっしゃるかもしれませんが、1週間なんですよ。パンフレットの制作を始めたのが開催1カ月前で。

実行委員が全員医学生だったため授業や実習で時間の余裕がなく、企画に関して決まっていないことが多すぎて、正直パンフレットを作れる状況ではなかったんです。しかしもう作らないと間に合わないということで。ステージのタイムテーブルのページを作りながらタイムテーブルを組んだくらいです(苦笑)。

ー全36ページに「いつ・どこで・何が」の情報もしっかり載っていますが・・・。なかなか大変だったのでは?

緒方 昼夜問わず、寝る間も惜しんでグラフィックソフトと格闘しました(苦笑)。よくできたなと自分でも思います。

情報に関しては、委員長である自分が制作に携わったことがよかったのかもしれません。掲載する情報は自分が持っていましたから。情報のやりとりを素早く正確にできて、相談も分担も一瞬で済むという点では、2人だけで作ったのが逆によかったのかな、と。

ただ、やはり欠陥もありまして。・・・日付を入れ忘れたんです。

3年ぶりに復活した医学部本九祭。これからも続いて欲しいという願いが表紙のDNAに込められている

ーそれほどギリギリの状態で制作される中で、意識したことは何ですか?

緒方 作るときによく言っていたのは「プリミティブな感じ」ですかね。シンプルでわかりやすく、かつかっこいいデザインを目指しました。

ー確かにシンプル。表紙もですよね、白地にDNAがバンッと。

緒方 はい。一般の方にも医学部をイメージしてもらえる医学部らしいモチーフを使おうと思って、DNAがわかりやすいかな、と。

DNAって、本九祭のモチーフとしてぴったりなんですよ。異なる性質の塩基が手をつないで構成されたDNAは1つの個体を作り上げ、それが次の代につながっていく。本九祭も同じです。医学生と医学生、医学生と地域の方々、みんなが手をつないで1つの本九祭を作り上げる。そのように、来年以降も続いていってほしいと思いますね。

それからこれはもう一人の制作者が言ってくれたことなんですが。DNAって体の設計図なんですが、パンフレットもまた、大学祭の設計図なんですよ。体の情報が全部DNAに載っているように、本九祭の全てがここに載っているわけです。

ー設計図、ですか。

緒方 はい。パンフレットができあがったとき、まるで本九祭が終わったかのような達成感があると同時に、本九祭へのモチベーションが一気に上がったんです。本九祭のイメージがぐっと湧いたんですよ。

僕たちは前の本九祭を体験していません。だから本九祭がどんなものなのか、どんなものになるのかのイメージがなかった。準備が遅れていた原因の1つと言えるんじゃないかと思います。そこにパンフレットができあがっただけでイメージができて、急ごしらえでも本九祭を作ることができた。パンフレットにはそれだけの力があります。

次の本九祭実行委員も、これを見て本九祭をイメージしてくれるかもしれない。このパンフレットが、彼らの「もっといい本九祭を作ろう」というやる気の火付け役になれたらな、と思います。

ー次の本九祭にもつながるパンフレットなんですね。来年が楽しみです。ありがとうございました。

確かに開催日である9月16日の記載がどこにもない。しかし1週間で作ったとは思えない立派なパンフレットだ


来場者の〝道しるべ〟紫熊祭公式パンフレット

熊本大学黒髪キャンパスで11月2日から4日の3日間開催された第七回紫熊祭。各学部から300人以上が集まって実行委員を組織する紫熊祭は九州最大級の規模を誇っています。パンフレットに掲載する情報は膨大で、それらを正しくわかりやすく掲載するのは至難の技。10名で半年かけた全92ページのパンフレットを、どんな想いで作ったのか。第七回紫熊祭実行委員会パンフレット班長の岡野風夏さん(文学部文学科2年)に伺いました。

ー制作に半年かけられたとか。どんなことを念頭に作られていたんですか?

岡野 紫熊祭公式パンフレットは来場者様の「道しるべ」と言うか、紫熊祭を楽しんでいただくための情報誌だと考えています。パンフレットを見ながら企画を回って楽しんでいただいて、「紫熊祭楽しかったなー、あ、このパンフレットがあったからだよね」と思っていただけるようなパンフレットになればいいなと思いながら作りました。

そのためには、いつどこで何があっているのかを知らない来場者様にわかりやすいものを作らないといけない。目次を目立たせたり、昨年まではなかったページ横の小見出しをつけたり工夫して、わかりやすい構成になるように悩みました。

紫熊祭実行委員会パンフレット班。前列はクオリティの高い特集ページを独学で作り上げた1年生、後列は半年間妥協のないパンフレット制作を支え合った2年生

ー構成も熟考されただけあって、デザインと併せてハイクオリティなパンフレットですね。中でも表紙に力を入れたと伺っていますが?

岡野 はい、表紙は誰もが最初に見るところですから特に重きを置いていました。表紙だけでページを開かせるくらいのクオリティが欲しいと思って。普通2年生は1人10数ページ受け持つのですが、2年生の中で一番デザインの得意な班員に「担当するのは4ページだけでいいから、表紙に専念してくれ」と表紙担当をお願いしました。

パンフレットの表紙として求められるデザインと作りたいデザインとの食い違いに折り合いをつけること、テーマ「Seventh chord」をうまく表現することが難しかったようですが、50通りもの試作をしながら素晴らしい表紙を作ってくれました。

ーすごいですね。他にも何かこだわったことが?

岡野 ページの隅々まで妥協しないことを心がけていました。

例えば、異なるページで同じパーツを使うのに、ページによって赤が少し違う赤になっていたとします。違うページですから修正しなくてもほとんどの人が気づきませんし、制作期間の最後の方になると時間も気力も余裕がありません。それでも、「あの時ここを修正しておけばよかった」と後悔したくなくて、そんな細かいところまで修正しました。

パンフレットは紙媒体ですから、Webと違ってそのままの形でずっと残りますよね。それはもちろんいいことなんですが、どこかにミスがあるとそれが残ってしまう。それで後悔するようなことは絶対にしたくない、とみんなで励まし合いながら作りました。

そのことが自信になりましたし、今も誇りです。

ー制作を思い返して、いかがですか?

岡野 とっても楽しかったです!

こんなに何かに熱中したことは人生で初めてだったんじゃないかと思います(笑)。もともとデザインをするのは好きで、昨年紫熊祭実行委員会に入ってパンフレット作成に携わりました。それを踏まえて今年はもっといいものを作ろう、去年のパンフレットを越えよう、と頑張ってきたんです。

自分でやりたい、こうしたい、というイメージがあって、それに同意してくれる仲間がいて、みんなで全力で打ち込める。こんな経験は本当に初めてでしたし、そんな仲間がいること、こんな経験ができたことを本当に誇りに思います。

ーそんな想いの込められたパンフレットなんですね。私もこのパンフレットを持って今回の紫熊祭を楽しみました。ありがとうございました。

表紙案の変遷。左から右へ次々に案を形にしたが、最終的に手前のデザインに決まった。