熊本の旬な情報を発信しているKumarismのメンバーが、大学生ならではの偏った目線でモノコトを熱く語ります!
Ayaka

薬学部1年女子。もともとはアナウンサー志望で、中学・高校の6年間は放送部でアナウンスにどっぷりハマった。


もともとアナウンサー志望で中学1年生の頃、放送部への入部を決めました。その後、恩師や仲間との出会いをきっかけに放送にハマり、高校生では九州大会や全国大会を経験しました。引退した今でも、全国大会のために東京や佐賀に出向くほど放送と、放送を通して出会った人たちが大好きです。

ちなみに「放送部」って何をしているか、皆さんは知っていますか?


放送部にも大会があるんだ!

放送部はお昼の放送や司会のイメージかもしれません。しかし、大会もちゃんとあります。中でもNHK杯全国高校放送コンテストが一番大きな大会です。
読みはアナウンス・朗読の2部門、番組で4部門あります。今回は、私がこれまでやってきた「アナウンス」についてお話しします。

読むだけがアナウンスじゃないんです
まずはネタ探しから!?

アナウンスはまず原稿作りのためのネタ探しから始まります!放送部部員は日常生活で常にアンテナを張っています。ここで聞く人たちに「おっ」と言わせるネタを見つけられるかが腕の見せ所です。ローカル情報誌や校内の張り紙などをチェックしてネタを発掘します。

そして取材をします。このとき気を付けるのは「その人にしか言えないこと」を聞き出すことです。何かに一生懸命だったり、人と違う活動をしていたりする人は、その人なりのこだわりや思いを持っていることが多いです。それをいかに聞き出せるかが大事です。私は過去に、海の生態系に興味を持ち、グアム大学での研修に参加した生徒などを取材しました。

愛情を込めてお手製の原稿を

その取材内容をもとに本番読むための原稿を作っていきます。アナウンスの制限時間は1分半と短く、原稿に入れる内容はほんのわずかです。どの部分に焦点を当てるのか、それは取材した人なのか、その人が行っている活動なのか、決めるのは自分です。私は実際、動物と人間が共存できる環境づくりのために研究者を目指す生徒が、グアム大学で植物の種と肥料を丸めたシードボールを山に入れるフィールドワークに参加して夢への思いを強めた、という内容の原稿を書きました。実際はグアムだけでなくサイパンの高校に行っていたことや、グアム大学でのシードボール作り以外の研修内容、彼女が高校で行っていた研究内容などたくさんのことを取材していました。興味深い話ばかりで、どれも知ってほしいと思いましたが、それは「一番伝えたいこと」ではないので、省きました。「一番伝えたいこと」は何なのかというところで迷うものです。それによって、原稿はガラリと変わります。真ん中に軸があって、それと、それを伝えるために最低限必要な情報しか原稿には盛り込めないのです。

原稿作りで一番楽しいと思うのは言葉選びです。ここにどこまでこだわるかは人それぞれなのですが、私はこだわりが強いタイプでした。その、言葉を選ぶ工程が大変だけど好きで、よく部室で頭を抱えていました。同じことを言っている文でも、言葉や表現を変えるだけで、聞いている人からすると全く違った伝わり方になるんです。言葉って面白いですよね。

やっぱりアナウンスの醍醐味(だいごみ)は、、、

読むこと!でも、読み上げるのとは違います。テレビのアナウンサーが棒読みだったら、嫌ですよね? 読み上げるのではなく、伝えるのです。アナウンスは録音審査ではないので、その場一発でどれだけ自分の実力が出せるかです。緊張して噛(か)んでしまったり、思わぬところで読み違えたり、まさかのタイムオーバーで失格になったりすることだって珍しくありません。だから、その1分半を成功させるために何十何百と読みの練習を重ねます。私も、初めは緊張してばかりでしたが、2年生の秋ごろを境に、大会でもあまり緊張することがなくなって、自分の発表を楽しめるようになりました。出番が近づくと、早く読みたい!早くこの話を聞いてほしい、知ってほしい、伝えたい!という思いが強くなりました。たった1分半。されど1分半。そこには私の青春が詰まっていました。

6年間放送をやってきて「伝える」読みを追求し、技術面に関しては上達しましたが、「伝える」ことの本質についてはまだ分からない部分があります。その答えを求めて、24年間、県内テレビ局でアナウンサーを務めた村上美香さんに聞きに行きました。


-村上さんにとって「伝える」とはどんなことですか。

村上さん 自分の話が相手の心に届くこと。主体は話す側ではなく聞く側です。単に話すのではなく、子どもにも分かるように簡単な言葉に置き換えたり、年代に合わせて話すスピードを考えたり、受け入れてもらえるまでさまざまな方法でトライします。ニュースではお年寄りから小学4年生の子供までが一発でわかるようにします。しかし、話す相手が若者ばかりの時はあまりゆっくり話していると飽きてしまうので、やはり話す相手によって工夫が必要だと思います。また、自分がどんなふうに話しているか客観的に見ることが大切です。自分の話し方を分析することで、きちんと伝わっていないと分かるので、(客観的に見ることは)伝えるために必要なことなのです。

-他にどんなことを心がけていますか。

村上さん 技術面よりも大切なのは、まず「自分が何を伝えたいのか」をしっかり理解することです。アナウンサーという「伝える」仕事に就いて、取材をしたり原稿を書いたりすることを通して分かったのですが、表面の技術面ばかりを気にしてきれいに読んでいる人の読みは伝わらないんです。でも、なまっていたり、言葉が突っかかったりしても、伝わることってあるんです。それは、その人の人柄だったり、「伝えたい」という思いがあるからで、上っ面ではないから、少ない言葉でも、聞き手の心に届くんです。私は2時間の生放送番組では毎回、「今日はコレを伝えよう」と決めていました。一度に全てを伝えることは難しいからです。初めは緊張していましたが、緊張するのは「伝えたい」ことよりも「自分がどう見られているか」に心が行っている時。伝えたいことを一番に考えることができれば、緊張はしなくなります。

-アナウンサーとして仕事をする中でつらいことはありましたか。

自分が発した言葉で思いがけず人を傷つけてしまったことはあります。自分は全然そういうつもりがなくても、受け取り手の環境や立場によって全然違うように受け取ることもあるから注意が必要です。天気一つとっても、晴れがいい天気とは限らないんです。雨がないと暮らしていけない農家の方もいますから。言葉は立場によって全然違う意味になるので、自分が発する言葉には気をつけたいですね。

-アナウンサーの魅力は何ですか。

アナウンサーに限らないのですが、テレビや新聞などメディアに勤めていると、いろんな人に会えるんですよ。有名人とか、この道何十年っていう人、最前線で頑張っている人、地道に頑張っている人など、人の輪が広がります。その人たちからの影響は大きいです。

動物愛護の取材をしていて出会った食肉作業員の方が特に印象に残っています。「牛」いう生き物が、「肉」という商品になるまでを手掛けている人で、毎日何百頭もの牛の最期に立ち会うから命への考え方が優しいんです。できるだけ苦しみを味わわせないように商品にするようにしていて、彼らの間では「殺す」とは言わずに、「解く」と言います。牛たちを悲しみや苦しみから解放するという意味です。彼が、私が知らなかった世界をたくさん教えてくれました。すばらしい仕事をしている彼らも、差別を受けていることを知りました。このような人々との出会いが、生きづらさを抱える人々が生きやすくなるような情報発信をする、現在の「ヒトコト社」を立ち上げるきっかけにもなりました。

「自分が何を伝えたいのかを理解することが大切」と話す村上美香さん


終わりに

今回の村上さんの話を聞いて、「伝える」ということは実はシンプルなことだと分かりました。 聞いた人の価値観を変えたり、新しい世界を見せたりするような大それたことではなく、「伝える」ということは日常生活に数え切れないほどあって、どんな立場に立っても「伝える」という ことは重要です。「伝える」上で大事なのは、読みの技術以上に、何を伝えたいかを自分が理解して伝えられることだと村上さんに教えていただきました。

青春時代にはそれぞれハマるものがあります。私には、放送がぴったりでした。私が思う放送の魅力は、取材を通していろんな人の思いに触れることができて、 それを自分の言葉で伝えられることです。そんな放送に6年間一生懸命になれたこと、放送を通 して全国、九州、県内でいろんな人に出会えたことは一生の財産です。放送があったからこそ今 の自分があります。「伝える」ことのプロフェッショナルである村上さんのお話を通して、高校放送とは一味違う「伝える」ことの裏側を知ることができました。