「その3: ボルツ」
この時期、神保町は「神田カレーグランプリ」
エリアは幅広く神田ということになりますが、その中心はやはり神保町でしょう。
目玉の企画はふたつ。
1)全88の参加店を回ってスタンプラリー。その数に応じてカレーマイスターに認定。
2)予選を経て11月に決勝戦が開催されるグランプリ。
今年で7回目。
町のイベントとして定着し、お祭りとしてもなかなか盛り上がりますが…、このグランプリ、正直、カレー好きからするとちょっと物足りない。
最初の2回こそ「ボンディ」「マンダラ」と神保町を代表する本格派が受賞しましたが、その後はチェーン店ばかり。
しかも神田・神保町生え抜きではなく、他の地域から来たような店…
その1でも名前を挙げましたが、「共栄堂」「エチオピア」「カーマ」「まんてん」「キッチン南海」といった大御所は、今更感があるのかエントリーしないんですよね。
「パンチマハル」や「ディラン」「仙臺」といった最近の実力店もとんと見かけません。
今年エントリーした店のうちでは、個人的には「TAKEUCHI」に頑張ってほしいです。
彩り豊かなシーフードカレーやハンバーグカレーには洋食屋ならではの「ごちそう感」があります。
今回紹介する「ボルツ」もまた、有名店でありながら「神田カレーグランプリ」とはそっと距離を置いています。
というか、神保町と竹橋の間の閑散としたオフィス街の裏通りにあって、取り残され、忘れられてしまったような。
でもこの「ボルツ」が1980年代後半の激辛カレーブームに火をつけた店なんですよね。
3倍や7倍と辛さを段階で表すのを始めたのがここ。
レトルトカレーの「LEE」が20倍や30倍といった商品を出し、イッキに加熱しました。
今もボルツでは最高で30倍を提供しています。
神保町だと「エチオピア」が50倍。
涼しい顔をしてこの50倍を食べているサラリーマンをたまに見かけたりします。(ちなみに、日本一辛いカレーとされたのは三田線で神保町から4駅行った千石にある「大沢食堂」。残念ながら今は閉店しています。ルーが赤いペンキのようでした)
激辛ブームに乗って「ボルツ」も全国に50店舗近くを構えましたが、今となっては都内に残るのはここ神保町だけです。
カウンターとテーブルが2つあるだけの小さな店で、30年近い歴史の間にしみついたカレーのスパイスでどこか色あせています。
でもそれがなつかしくていいんですよね。
昭和のまま、今もゆっくりと時を時を刻んでいます。
入り口近くの棚に並んだCDはビートルズと吉田拓郎ばかりでした。
この日頼んだのはビーフと野菜のカレーにゆで玉子を追加して辛さは5倍。
オーダーすると年配の店長が福神漬け、玉ねぎ・大根・グリーンチリのピクルス4点セットを運んできて、カウンターに戻って野菜を炒め始めました。
やがて届いたカレーポットには具の混ざりあった、インドでもない洋風でもない、独特なサラサラとしたカレー。
辛さの割に癖はなく、毎日でも食べられます。
ここはビーフ、チキン、アサリ、エビ、ベーコン、トマト、野菜、玉子を自由にトッピングできるのですが、どういう組み合わせにしても違和感がありません。
それだけ懐の広い、完成度の高いルーなのでしょう。
誰か後継者はいないものか。
「ボルツ」が閉店してしまったら、神保町カレー界、いや、日本のカレー界に大きな穴がぽっかりと空いてしまうのではないか。
そう思います。
混具合:★☆☆☆☆
知名度:★★★★☆
大盛り:★☆☆☆☆
コスパ:★★☆☆☆
テキスト/おかむー
青森生まれのアラフォー男子。ひょんな縁から熊本生まれの妻と結婚し、いまや体の半分は熊本人。幼少時から読書と音楽が命の源で、家には膨大な量の本とCDを所有。妻の断捨離攻撃に震えながら暮らしています。
コメント
0