「その14:とんがらし」

高度経済成長の後にオイルショック。
バブルとその崩壊による失われた10年。
その後、現在は戦後3番目に長い景気回復と言われているけど、ほんまかいな。
庶民には全然実感がない。
格差社会と呼ばれて久しく、僕らの外食も「たまの贅沢」と時間も金もかけられないファーストフードと二極分化しているように思う。
そしてDNA の奥底にあるのはこの歌。
「はたらけど はたらけど なお我が暮らし楽にならざり ぢっと手を見る」(石川啄木)

そんな忙しい日本ならではの食事スタイルと言えば、立ち食いそば・うどん。
チェーン店であったり、個人経営の小さな店だったり。
大抵の駅前・駅ナカにありますよね。
”早い、安い、そこそこうまい”。
昼ともなると、どの店もサラリーマンが大行列です。
最近だと、少し割高だけどかなりうまい、そんな立ち食いそばも。
出張で東京駅を利用する方には八重洲と丸の内を結ぶ地下通路にある「越後そば」がおススメです。
一駅ほど離れていますが、兜町の先にある「がんぎ」は日本酒で一杯やれる立ち食いそばです。

日本一うまい立ち食いそばはどこか。
ネットで探してみるとかなり賑わってますね。
出し汁や天ぷらの味そのものを追及する人もいれば、コスパこそ、という人もいます。「日本一コスパのいい立ち食いそば」とされる店が神保町と水道橋の間にあります。
とんがらし」という名前。
ちょっとわかりにくい場所にありますが、11時過ぎの開店以来、昼時を外した時間に行っても行列です。
並んでる時の立ち話にそっと耳を傾けると、近くまで来た営業マンが噂を聞いて足を延ばしてみた、というケースが多いようです。

並んでみるとわかりますが、列が全然先に進みません。
狭い店内も混雑してギュウギュウというわけでもなく。
どういうことかというと、注文を受けてからひとつひとつ天ぷらを揚げてるんですね。
作り置きをしない。
だから一杯一杯の時間はかかっても、とてもおいしい。
並んでみる価値があります。
一番人気の「もりあわせ」はイカ1ケ+海老4ケ、ないしはイカ1ケ+海老3ケ+ナス半切れ(その時々の海老の大きさなどから何本入ってるかが変わる)。
器の中で山のようになった天ぷらを見ているとちょっとした贅沢のようでほっこりした気持ちになります。
これで550円なのだから確かにとんでもないコスパです。
そばかうどん、あるいは「ひもかわ」と呼ばれるきしめんのような平たい麺が選べます。このひもかわを頼む人が多く、出遅れるとその日は完売ということがよくあります。

しかし、天ぷらをその場で揚げるというだけなのになぜ、これほどまで時間がかかるのか?
老夫婦が2人だけでゆっくりゆっくり切り盛りしているからなんですね。
正直、きれいな店ではなく壁に貼られたメニューも雑然としてるけど、急ぐなら他の店に行けばいいし、清潔感を求めるなら別の店に行けばいい。
「とんがらし」にしかない味と佇まい。
これから先の日本経済がどうなるか分からず、景気がよくなろうと悪くなろうと、こういう店をなくしてはいけない。
天ぷらを揚げるおじいさんと注文を取るおばあさんにはいつまでも元気でいて欲しいです。

混具合:★★★★☆
知名度:★★★☆☆
大盛り:★★★★☆
コスパ:★★★★★

店舗情報

とんがらし

住所
東京都千代田区三崎町3-2-10 風水神田三崎ビル 1F
営業時間
月~木:11:15~15:45 17:10~19:00 金:11:15~15:45 土:11:20~14:20
休業日
日・祝

テキスト/おかむー

青森生まれのアラフォー男子。ひょんな縁から熊本生まれの妻と結婚し、いまや体の半分は熊本人。幼少時から読書と音楽が命の源で、家には膨大な量の本とCDを所有。妻の断捨離攻撃に震えながら暮らしています。