肥薩おれんじ鉄道に乗ったことはありますか?不知火海を望みながら、熊本は八代から鹿児島の川内までを結ぶ私鉄です。

青春18きっぷで地元福岡と熊本を往復していた高校時代、どうしても鈍行で鹿児島に日帰りで行くことはできませんでした。三年越しにその悲願が叶った模様をお伝えします。

大学生の長い夏休みも終わりかけた9月下旬の夜、私は訳あって川内駅構内を疾走していました。肥薩おれんじ鉄道経由の鈍行最終列車で鹿児島から熊本へ帰ろうとしていた私は、川内駅で肥薩おれんじ鉄道に乗り換えようとしたところで手持ちのお金が肥薩おれんじ鉄道区間の切符代に500円足りないことに気づいたのです。

川内駅から最寄りのコンビニまでは片道徒歩4分、対して乗り換え時間は5分。列車を降りるなりエスカレーターを駆け上がり、駆け下り、走りに走りました。初めての肥薩おれんじ鉄道で改札口も乗り場もわからず、しかしのんびり迷っている暇などありません。ドアを閉めて今にも発車しようという最終列車に向かって息を切らして走り、乗せてもらうことができました(写真は、肥薩おれんじ鉄道を降りた八代駅にて)。

そもそもどうしてそんなことになったのでしょう。新幹線で初めて鹿児島を訪れた私は、帰りの新幹線の時間を調べようと時刻表をめくり、鹿児島本線のページで手を止めました。19時前に鹿児島中央駅を出れば、肥薩おれんじ鉄道の最終列車と、JR線八代発の最終列車に間に合うことに気づいたのです。鹿児島中央駅でJR区間の切符を買った私はそれだけでご機嫌になって、肥薩おれんじ鉄道の切符代を調べるのを忘れたまま土産物店で鹿児島土産を物色してしまっていたのでした。

この大冒険を鹿児島出身の教授に話すと、「おれんじ鉄道は夜中に乗るような列車じゃないよ」と笑われてしまいました。「そんな夜じゃあ何も見えなかったでしょう、あれは夕方に乗るのがいいよ」と。

「それなら早朝と夕方で鹿児島まで日帰り旅行をするのもいいかもしれないな」と頭の片隅で考えていた私は、終電ダッシュからたった2週間後、それを実現することになるのでした。

朝夕冷え込むようになった10月上旬の朝、私は訳あって熊本市街を自転車で疾走していました。肥薩おれんじ鉄道経由の鈍行列車で鹿児島に行こうとしていた私は、列車の発車時刻20分前にようやく家を出たのです。

熊本大学黒髪キャンパス周辺から熊本駅までは自転車で片道30分。もっと早く家を出るつもりだったのに、と口の中でもごもご言いながら、風をきって進みました。幸い発車時刻に余裕をもって熊本駅に着くことができましたが、熊本駅は現在工事中。自転車置き場が移転しています。慌てて移転先へ向かって自転車をとめて改札口まで走るのですが、これが何とも遠い。肩からずり落ちる重いカバンを押し上げ、脱げる靴を履き直しながら走っていると、涼しい秋の朝なのに全身汗びっしょり。まるで大雨の中走ってきたかのような風貌で列車に乗ることができました。

さて、今回はしっかり往復の切符代を用意しています。八代駅で肥薩おれんじ鉄道の切符を買おうとすると、なんと土日祝日限定の一日乗車券を買うことができました。なんと、八代ー川内の片道料金よりも安い2000円!肥薩おれんじ鉄道で鹿児島に行かれるみなさん、ぜひこちらをおすすめします。

肥薩おれんじ鉄道では、9種類のラッピング列車がしばしば運行されています。今回私が乗ったのは、芦北町の「葦北鉄砲隊」のラッピング列車。他にもくまモンや水族館、動物園の絵が描かれた車体もあるようですよ。

教授おすすめの車窓はいかがでしょうか。熊本駅まで全力で自転車を漕いだ疲れが出たのがぼうっとしながら揺られていると、突然パッと海が広がりました。不知火海です。向こうに天草の山並みがうっすらと見えています。

確かにこれは美しい。折角おれんじ鉄道に乗ってもこれを見ないのはもったいない、と教授が言うのがよくわかりました。

朝の肥薩おれんじ鉄道を堪能した私はその後二度目の鹿児島を楽しみ、夕方の肥薩おれんじ鉄道を堪能したのか……と思いきや。残念ながらそうはいきませんでした。

最終列車の1本前のおれんじ鉄道に乗ったところで、日の入りの早い秋のこと、もう日が沈んでしまって車窓は真っ暗。うっすらとオレンジ色に染まった空が見えたような記憶もありますが、朝から疲れきった私は、心地よい揺れの中ですっかり寝入ってしまったのでした。

いつか必ずや、夕方の車窓を心ゆくまで楽しみたいものです。何らかの理由で再び疾走することになるのではないかとも思いますが、それが実現する日は近い……?かもしれませんね。

むとまり

よく驚かれますが乗り鉄(予備軍)