52ヘルツのクジラたち

著:町田そのこ

耐えがたい喪失感にさいなまれたとき、人は誰かに自分の声を聴いてもらうことでそれを埋めようとします。でも、もしその声が誰にも聴こえない特殊な声だったら、あなたはどうしますか?

タイトルにある「52ヘルツのクジラ」とは、世界にたった1頭だけ存在するとされる、他のクジラには聴き取れない周波数で鳴くクジラのこと。つまり、最も孤独な存在─。人生を家族に搾取され続けてきた女性と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれてきた少年との出会いから物語は始まります。彼らが発する52ヘルツの声は誰かの耳に届くのか。

読みながら主人公の幸せを願わずにはいられないと叫びたくなるほど感情移入した本作。2021年に私が読んだ(数少ない)小説の中でダントツの1位だと思っていたら、今年の「本屋大賞」にも選ばれました。

この社会の至る所で鳴り響いているだろう52ヘルツの声。それをしっかりと聴き取れる人間になりたい。本作を読み終えたとき、そう強く思いました。

定価 1760円 四六判 中央公論新社

紹介するのは

金龍堂まるぶん店
荒川 俊介さん

「上司が無視する、私の声も52ヘルツ?」ー上司の耳にはイヤホンが。リモート会議中でした