つんどくよんどく

チャーちゃん

作:保坂 和志 画:小沢 さかえ

「ぼく、チャーちゃん。はっきり言って、いま死んでます」という衝撃のセリフから始まるこの絵本は、暗く重たいものとして捉えられている死のイメージを変えてしまうかもしれません。なぜなら、死んだ猫のチャーちゃんは、その世界で軽やかに踊っているのです。風の吹く草原をどこまでも走って遊ぶ日々は、生きていた頃と変わらない。

「死んでも生きても、ぼくはぼく」と語るチャーちゃんの未練のなさが、残された側には少し寂しいけれど…。でも、それでいい。おなかがすくことも、病気になることもない場所で、幸せでいてほしい。別れの悲しみを知る人なら誰もが願う風景が、色鮮やかに、画面からはじけそうなほどの、まばゆさで描かれています。

動物の死は、言葉を理解できないが故の「あの時、ああすればよかった」という後悔が生まれますよね。そんな思いが込み上げたときに、開いてみてください。見えない傷をそっと癒やす一冊になると思います。

定価 1540円 29×22cm 福音館書店

紹介するのは

長崎次郎書店
佐藤 美和さん

コミック・児童書・学習参考書・雑貨担当。好きな動物はアザラシです